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【呪術廻戦】薄夜の蜉蝣【R18】

第2章 甘く苦いメランコリー



「どう考えても、俺の方がスペック上だろ。俺が傑に勝てない理由は?」
「そ、それは……だって……」

言葉が続かない。

私が答えあぐねいていると、五条先輩は苛立たしそうに大きな溜息をついた。

先輩は私の両肩を掴むと、顔を近づけて、更に距離を詰めてくる。心臓がドキドキして苦しい。私は、自分の胸元をぎゅっと握りしめた。

吐息が触れる距離まで近づいたところで、ピタリと動きが止まった。

私の返事を待つかのように、彼の双眼が真っ直ぐにこちらを見ている。

「私は……」

なんて伝えれば、正解なんだろうか。

「好きな人を……傑お兄ちゃんを、悲しませたくない」

短い時間で色々考えて、結局出てきたのは月並みな台詞だった。

私が、傑お兄ちゃんのことを好きな人だと言った途端、五条先輩の表情が歪んだのが分かった。

悔しいような、悲しいような、それでいて怒りを押し殺してるような表情で、先輩は小さく舌打ちをした。

「あのなぁ……本当に傑を好きなら、なんでそんなに不幸のドン底にいるような顔してんだよ」

私の顎を掴んだ先輩の指が、くいっと持ち上げられた。無理矢理上を向かされて、彼と視線が交わる。

私の視界には、彼の整った輪郭と碧色の美しい虹彩しか映らない。呼吸さえ憚られるような気がした。まるで時が止まったかのような錯覚を起こす。

「俺だったら、好きなヤツにそんな顔させない」

先輩の親指が、私の下唇に触れた。

優しく撫でられて、思わずビクッと反応してしまう。

先輩は、私の反応を見て、少しだけ目を細めて笑った。その視線が私の唇に注がれていることに気づいて、カッと頬が熱くなる。

すりすりと、頬から耳へと順に撫でる五条先輩の指の感触に、「ん」と声が洩れた。そのまま降りてきて私の首筋をなぞり、鎖骨に触れた。

第二ボタンまで開いているブラウスの襟を引っ張ると、露になった私の肌に口付けられる。ちゅっというリップ音とともに、チリッとした痛みが走る。



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