第13章 白夜の陽炎✿
「私も……五条先輩の傍にいたい。置いていかれないように、呪術もがんばり……ます」
モジモジして尻すぼみになりつつも、気持ちを告げると、先輩はとても嬉しそうに笑ってくれた。
急に恥ずかしくなってきて、慌てて顔を背けようとしたが易易と阻止されてしまう。
至近距離から見つめられる青い瞳に思わず息を飲んだ後に、呼吸ごと食むようにして口づけられる。
二度三度と角度を変えて重なる唇。
触れては離れを何度か繰り返してから唇が離れる頃には、すっかり酸欠になっていた。
「……っ、はぁ……は……」
「ゆめ、これから覚悟しろよ」
そう言って、五条先輩が私の額に自分の額をコツンと合わせてくる。
「俺の愛は呪いレベルだからな。呪術もミッチリ稽古つけてやるから、ピーピー泣かないようにせいぜい気張れ」
「えぇ……五条先輩が私を泣かすようだったら、連れ戻すってお兄ちゃんが言ってましたけど」
「傑がなんと言おうと、ゆめは俺の傍を離れないだろ?」
五条先輩は自信満々の態度で笑うと私の頬に手を添えてくる。
幸せを噛み締めつつ、私はその手に自分の手を重ねて指先を絡めた。
触れ合う度に増す幸せが何故だか怖くなって目を瞑れば、まるで私の不安を察したかのようにもう一度抱きしめられる。
安心感に包まれながら、この人が傍にいてくれるのならば、もう何も心配することはないと心から思えた。
「このまま寝るぞ」
狭い簡易ベッドの上で、五条先輩は布団を掛けてそう促してくる。
私は小さく返事すると身体を預けて目を瞑る。しばらくすると、頭上から静かな寝息が聞こえてくる。
夏も終わりに近づいて肌寒さを感じ始めた夜。
この温もりの中で眠れることが、今は何よりの幸福だと感じることが出来た。
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