第13章 白夜の陽炎✿
「う……っ、せんぱ……っひ、ッく」
呼吸がうまく出来ず、しゃくり上げながら泣く私の頭を五条先輩が撫でてくれる。
いつものように彼の揶揄が飛んでくることもなく、余計に泣けてきてしまう。こんな姿、見せたくなんて無いのに嗚咽が止まらない。
そんな私に対して、背中に回っている温かい手は、繰り返しさすってくれる。それが余計に心を揺さぶってきて、尚のこと涙を止めることが出来ない。
「好き……好き、です……っ、せんぱいっ」
そう口にして、私は縋り付くように彼の胸元に額を擦り付けた。
“好き”という言葉を告げる度に、胸が張り裂けそうなくらい痛んだ。
それを打ち消すように、好きと言い続ける私の声に悲壮感が漂っていたのだろう。五条先輩が頭上で困ったように笑いながら言った。
「あーあ、鼻水と涙で大変なコトになってんぞ。高専一のイケメンに告白すんだから、もう少しロマンチックに告白してくれりゃあイイのに」
少しムッとしたけれど、いつものような軽口に安心する。五条先輩のシャツを摑み、私は口を開いた。
「夜の仮眠室で二人きりって、十分ロマンチックだと思いますけど?」
それを聞き、五条先輩は堪らずといった風に吹き出した後、今度は私の顎を掴んで上を向かせる。
ゆっくりと近付いてくる整った顔を眺めながら、私はそっと目を閉じた。
瞼に優しくキスを落とされた後、押し付けられて触れ合った唇。温かくて、満たされる。
そっと離れていく温もりを感じながら目を開くと、五条先輩が口元を手で覆いながら視線を外した。
「泣きやんだか?」
そう問いかけられ、私はこくりと首を縦に振った。
「あんま派手に泣くな。瞼がパンパンに腫れるぞ」
そんな風に言いつつも、先輩は優しい手つきで私の目尻を親指で拭ってくれる。
大きな手は私の頬を包むようにして触れ、耳裏を人差し指でなぞる。くすぐったくて身を捩れば、先輩の方へ強く抱き寄せられた。
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