第13章 白夜の陽炎✿
自分でも説明出来ないほど、心の中がぐっちゃぐちゃだ。ゴミ箱をひっくり返して大量に散らばった光景を見て呆然とする、あの感じに似ている。
小刻みに震える私の身体を抱きしめると、傑お兄ちゃんは言い聞かせるように穏やかな声で諭してきた。
「シャワーを浴びてから、悟の所へ行くといい」
「……っ」
情けないことに、何の言葉も出なかった。
嫌だと首を横に振って否定することしか出来なかった。頬を伝う熱い雫だけが、唯一の抵抗。
そんな私を前に、傑お兄ちゃんは数秒だけ目を伏せてから改めて顔を上げる。
汗でベタついている私の髪を撫でて、そして頬を伝う涙を指先で掬いながら口を開いた。
「いいかい、ゆめ。悟と付き合っても、血の繋がりが無くとも、私にとって……君はたった一人の大事な妹だ」
嫌だと言いたいのに、喉がつかえたように声が出せない。悲しみが、はらはらと落ちてはシーツに滲む。
「もしも、悟がゆめを傷つけて泣かすことがあったら、本気で君を奪い取る。その時は、無限ごと悟を殴り飛ばすよ」
そう言って、傑お兄ちゃんは私の頬を両手で包み込んだ後、おでこにキスをしてくれた。
それから手を離して、シャワーを浴びてくるよう促してくる。最早そうする他に選択肢は無く、私も従った。
そして、身を清めてもすっきりしない気分のまま部屋へ戻ってくると、皺々のシャツを羽織った傑お兄ちゃんがベッドの縁に腰かけていた。
こちらが突っ立ったまま黙り込んでいると、
「悟は医務室の隣にある仮眠室にいるよ。今日は疲れすぎて、部屋まで戻るのはダルいと言っていた」
その傑お兄ちゃんの言葉に、私は無言でこくりと頷き、きびすを返して背を向けた。
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