第13章 白夜の陽炎✿
傑お兄ちゃんは私の欲するもの全てをくれる。
私の心の隙間を埋めるように、この人はその温かく包んでくれる。五条先輩の肌とは違うその体温にすら悦んでいる。我ながら最低だ。
「あっああ……んぅっ……傑っ、お願い」
自分の声とは思えないほど、甘ったるい声で紡がれる催促に胸焼けがしそうだ。
「あぁ、わかってる」
そう返した傑お兄ちゃんが、繋いだ手を強く握った。
「あ、あっ……もうっ、や、あァ……っ」
こちらが絶頂を訴えると、擦りつけるように穿たれ、薄い避妊具越しに欲望を注ぎ込まれた。
渦巻くような快感を身体中で味わい尽くす。
波が引くが如く、次第にその感覚も薄れ、心地良い脱力感と共にシーツの海に沈んだ。
私の中からずるりと抜かれる喪失感に、腰が震えた。
「大丈夫かい?」
そう問われて、私はゆっくりと身を起こして頷く。
ふと視線を落とせば、体液で汚れた自分の身体を見て少し罪悪感に駆られる。
タオルケットを手繰り寄せてさり気なく胸から下を隠すと、寒がっているのだと思われたようで、傑お兄ちゃんは愛おしげに目を細めて抱きすくめてきた。
「お兄ちゃん、暑いよ」
そう訴えても離してくれなくて、私は諦めて彼の胸に頭を預けた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだい?」
「こんなに何回もお兄ちゃんと寝てるし、もう誰とも付き合えなさそう」
軽くふざけて言うと、傑お兄ちゃんはくつくつと喉を鳴らして笑った。
「私が責任をとるから心配しないでくれ」
冗談めいたトーンだけれど、恐らくそれは本気。
きっと、私が駆け落ちしたいと言ったら静かに頷いて受け入れてくれるだろう。
この人は、そんな人。
「私ね、お兄ちゃんが好きだよ。大好き」
逞しい腕に抱かれてそう呟くと、私の髪を優しく撫でられ、首筋にそっと唇が触れる。
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