第13章 白夜の陽炎✿
私が息を荒げながら名を呼ぶと、お兄ちゃんは眉間に皺を寄せて余裕のなさそうな顔を見せた。
彼のすべての欲を、逞しい身体の重みを、溶けそうなほど熱い体温を受け止めて、目の前がちらつく程の大きな快楽の波に溺れる。
「……ハァッ、ゆめ……っ、う」
息を詰める気配がした。私の中に埋もれていたモノも、最奥で果てたようだった。
甘ったるい怠さが背骨へとじんわり広がるのを感じながら息を整える。
こうして肌を重ねる度に、五条先輩への想いが募っていく。でも、ぬるま湯に浸かっているようなこの心地良さは、今すぐには手放せそうにない。
ひとでなしと言われようと、この人がくれる愛情を放棄出来そうにない。
私をいじめていたモノが引き抜かれたが、まだ硬度は失っていなかった。
「傑と、もっとしたい」
「……もちろん、そのつもりだよ」
私のおねだりは想定内だったようだ。
二人で啄むような口付けを繰り返して、再び行為に没頭する。ベッドの中でひたすらお互いを求め合うだけの時間が過ぎていく。
それはとても幸せな時間。
目眩がする恍惚。
瞼の裏に、白髪碧眼の面影が浮かぶ。
何度お兄ちゃんに抱かれても、あの時五条先輩に与えられた熱と快楽が体の奥深くまで灼きついて取れない。
消せない落書きを塗り潰すかのように、込み上げる快楽に集中する。
「傑お兄ちゃ……ん」
吐息混じりに名前を呼ぶと、キスで応えてくれる。唇が離れ、傑お兄ちゃんの濡れた瞳と視線がぶつかる。
今にも喰われてしまいそうな欲情のこもった眼差しに、なんだかゾクゾクした。
「好き、なの……すぐる……大好き」
まるで己に暗示をかけるように呟いて、私はまた瞼の裏の“彼”に抱かれる。
焦がれても、きっとそれは許されない。
「んっ……や、あぁっ……」
傑お兄ちゃんの太いものが押し込まれたのを合図に、私の首を甘噛みされる。痛いのに気持ち良くて、思考回路を蕩けさせた。
本能のままに彼を感じ、必死にしがみついて快感をやり過ごす。
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