第12章 狼さんの甘咬み✿
感じるところを突かれて、不意に彼の上腕を爪で引っ掻いてしまった。
「っやぁっ……またっ、も、やだぁ……先輩、イっちゃいます」
相手の首をぎゅっと抱え込んで懇願の声を上げると、「俺も」と耳元で囁かれる。甘い衝撃に目眩がした。
「くっ……ゆめ……」
体重を掛けられ、逃げ道を失ったまま果てた。
避妊具越しに熱が注がれるのが本能で分かる。恍惚と多幸感の後の心地よい気怠さ。
「ごじょ……せんぱ……っ、すき」
耳から心臓が出そうな程に煩い鼓動を感じながら、目を閉じて呼吸を整える。
「先輩……好きです」
私がうわ言のように繰り返すと、
「知ってる」
と、大好きな人の声が答えてくれた。
心が満たされる安堵感に包まれながら、五条先輩の体温を感じていると彼が自身を引き抜いた。
喪失感と同時に異物感が去ったことに、内部が名残惜しそうにヒクリと震える。
五条先輩はゴムを片付けてから手早く後処理をすると、寝具に顔を埋めている私の頭を撫でながら「水は?」と聞いてくる。
掠れた声で返事をしてから、私はデスクの上にあるペットボトルを指差した。
「ほらよ」
「ありがとう……ございます」
先輩はわざわざミネラルウォーターの蓋を開けてくれてから渡してくれる。
口の中に入ってくる水をこくりこくりとゆっくり飲み干すと、行為で火照った身体を少しだけ冷ましてくれるようだった。
部屋に夜の静寂が訪れる。
熱に浮かされたような空気も落ち着き、添い寝してくれている先輩の胸にすり寄る。
トクントクンと鳴る心臓の音が心地よくて、そのまま目を瞑ると、彼は髪を梳きながら額に口付けてくれる。
「卒業まで返事は待つって、ゆめに言った傍からこれだもんな」
自嘲する五条先輩を前に、私は黙って大きな背中に腕を回す。まだ汗ばんでいる肌に頬を押し付けると、優しく抱きしめてくれた。
「会いに来てくれただけでも嬉しかったのに……もっと、五条先輩と一緒にいたくなっちゃいました」
素直に白状すると、彼はフハッと笑った後、ぎゅっと力を込める。そして、おでことおでこをくっつけた。まつ毛が触れる距離で視線がぶつかる。
→