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【呪術廻戦】薄夜の蜉蝣【R18】

第2章 甘く苦いメランコリー


反射的に首を手で隠しながら、まさか情事の声を聞かれていたのかと、心臓が大きく跳ねた。

五条先輩は、私の反応を見て確信を得たのか、クッと口角を上げた。

私は何も言えずに押し黙る。

しばらく沈黙が流れた。

遠くで虫の声だけが、うるさいくらいに響いていた。

「ゆめと傑が血の繋がりがない兄妹だってのは、割と前から知ってた」

御三家は互いに牽制し合っているから、情報戦がモノを言うんだよ。続けてそう呟いた五条先輩は、買った缶ジュースを片手に、私の隣に荒っぽく腰を下ろした。

隣で青いサイダーの缶を静かに開ける音が響く夜の帳。私は、ただ彼の横顔を見つめることしかできなかった。

私達の目の前を、しつこく横切る蛾がいる。

鬱陶しそうに、五条先輩が空いてる方の手を向ける。

呪力が小さく爆ぜるバシュッという音とともに、羽をもがれた蛾が地面に叩きつけられた。

「俺のところに上がってきた報告書では、『ゆめは親を事故で亡くし、夏油家に引き取られたのは10歳の時』『当時の隣家の住人によると、両親が旅行で一週間留守になったことがあり、二人が男女の関係になったのは、ゆめが14歳の時だと推測』『その期間の後、公園の木の陰でキスをする二人の姿を、近所の青年が目撃している』とかな。大体当たってるんじゃないか?」

この人は、どこまで知っているのだろう。

私の心の中まで見透かされているようで、なんだか怖い。

何と返答すればいいのか、迷っているうちに、先に彼が口を開いた。

「これをネタに、今からオマエを脅迫するけどイイよな?」

冗談なのか本気なのか、相変わらず真意の掴めない口調で話すものだから、一瞬聞き間違いかと思った。

でも、私に向けられた青い眼が真剣そのもので、息を呑む。ゴクリと喉を鳴らす音が耳の奥で鳴った気がした。



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