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【呪術廻戦】薄夜の蜉蝣【R18】

第2章 甘く苦いメランコリー


私が夏油家に養子として迎えてもらったのは、小学生の時。両親が事故で亡くなり、私は天涯孤独の身になった。

私の実の父と親友だった義父は、私を引き取ることを快く承諾してくれたらしい。

育ての両親は、私と傑お兄ちゃんを別け隔てなく育ててくれたし、本当の親と変わらないくらい私を心配してくれていると思う。

お兄ちゃんは思春期を迎えてから、両親と距離を置くようになった。私の知らないところで、何か確執があったのかもしれないと、今ならそう思う。

傑お兄ちゃんは、私が高専に入学した時には、既に呪術師として立派に任務をこなしていた。

「あの家は息が詰まるんだ」と、たった一度だけ、兄の本音を聞いたことがある。

「ゆめ」

突然名前を呼ばれて、ハッと我に返る。

「あ、五条先輩……」

顔を上げると、そこには完全にオフの時の、ラフな格好をしていた五条先輩が立っていた。Tシャツ姿でサングラスも外しているし、普段よりもかなり雰囲気が柔らかい。

こんなところで会うなんて思わなかった。どうしよう、何だかよく分からないけど気まずい。

「ここにいるってことは、今まで傑のとこに居たんだな」
「あ、はい。気がついたら、この時間でした」

自分でも違和感なく言葉が出てくる。お兄ちゃんの部屋にいたことは事実だ。余計なことは言うまい。

「ふーん……」

五条先輩の片眉が少し上がった。

私の顔から手元に視線を移してから、こちらの返答に納得していないような相槌を打つと、「ちょっと暇つぶしに付き合えよ」と言って、先輩の指が自販機のボタンを押した。

ガタンと音を立てて落ちてきたいちごオ・レのペットボトルを取り出して、私に投げ渡す。

「オマエ、いつもコレ買ってるだろ」

何気ない五条先輩の一言に、覚えていてくれたのかとドキッとした。

「え、あ……ありがとうございます」

緑茶の缶を太ももに挟んで、反射的にそれを受け取ったものの、フタを開ける気分になれず、そのまま両手で握りしめたまま俯いた。

「……首にキスマークついてるぞ。傑の部屋でナニしてきたんだ?」
「……っ!」

いきなり直球で指摘されて、思わず言葉に詰まった。



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