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【呪術廻戦】薄夜の蜉蝣【R18】

第10章 彩光✿


触れ合っている部分から、この音が先輩に伝わってしまいそうだ。

私の心臓は破裂しそうなくらい五月蝿くて、さっきから呼吸がうまく出来ない。

「せ、せんぱい」

やっとの思いで声を出すと、五条先輩は私から手を離し、向かい合うように座らされた。

易易とサイダーを没収されて、「あ」と洩らして顔を上げる。そうして否応でも視線が交わる青い瞳は、たった一人、私だけを映す。

まるで、吸い込まれそうな感覚になる程に、空色の虹彩は微動だにしなかった。

「ゆめが、傑を好きなのは知ってる」

五条先輩の手のひらが、私の頬を滑る。

「オマエの心を、今すぐに俺だけに向けようとは思わない。けどな、いずれ……」

至近距離で囁かれて、そのまま顎の下を擽られる。

こそばゆいけれど、何だか変な気分になりそうだ。

自分の心臓の音がうるさくて、私は先輩から顔を背けようとしたが、それを許してはもらえなかった。顎を固定されて、真っ直ぐな青い視線から逃れることが出来ない。


「          」


耳を聾(ろう)するほどの花火の炸裂音が、五条先輩の言葉をかき消した。苛烈に燃える炎のような強い光を放つ彼の瞳から、目が離せない。

窓の外では、煌めく光の残滓が瞬く間に散っていく。

息がかかる程に近い距離にいる先輩との沈黙が重苦しくて、私は息を詰まらせた。

その刹那。五条先輩は私の後頭部に手を添えて、ゆっくりと顔を近づけてきた。眼前で先輩の白い髪が揺れる。

我に返って目を見開くと、段々と視界が彼で埋め尽くされて、唇に柔らかい感触がした。

「ん……」

ああ、熱くて溶けそう。

それなのに、こんなに心が苦しくて切ないのは何故だろう。



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