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【呪術廻戦】薄夜の蜉蝣【R18】

第10章 彩光✿



「人が増えてきたな」

そう言って窓の外を眺めていた五条先輩は、サングラスを外してテーブルに置くと、再びぼんやりと宵闇に視線を向けている。

「花火、もうすぐ始まるんですかね」

そう返すが、五条先輩はどこか上の空だ。

店内の他の部屋や席にもお客さんが入っているようで、ガヤガヤと色々なところから話し声が聞こえてくる。

しばらくの沈黙。

ストローでグラスの中を掻き混ぜると、カラカラと氷がぶつかる音がして、炭酸が弾ける。

その様子をぼんやり眺めていると、

「なぁ」

五条先輩が突然私に話しかけてきて、少しビックリしてしまった。先輩の青い瞳が、私の顔を覗き込んでくる。

「ゆめ、」

先輩が口を開いた瞬間、大きな音と光が辺りを照らした。夜空に、色とりどりで大きな花火が打ち上がる。

「わあっ」

突然の大きな音で我に返った私は、思わず窓に顔を近付ける。

幾重にも重なって打ち上がる花火は迫力満点で、大輪の花が次々と空で咲いては消えていく。

暫くは、その迫力ある光景に圧倒されていた。

「ゆめ」

その時、また五条先輩が私の名前を呼ぶ。

花火の音が大きくてよく聞こえないので、彼の方を向こうとした。

「五条先輩、花火で聞こえな……」

けれど、その続きの言葉は出てこなかった。

次の瞬間、後ろから、ふわりと優しく抱きしめられる。思わずグラスを落としそうになるも、身動き出来ずに固まっていると、私の肩の辺りに五条先輩の顔が寄せられる。

「あの……先輩?」

私が声をかけても、先輩から返事はない。何かを確かめるように、更にぎゅっと抱きしめられた。

五条先輩の吐息が首筋に当たる。熱いソレが肌を掠めてくすぐったい。

汗の滲んだ素肌に彼の髪の毛先が当たってチクチクするけど、決して不快な訳じゃない。寧ろ心地好いとさえ思っている自分がいる。

「……俺」

蚊の鳴くような小さな声だったけど、静かな部屋だから聞き取れた。

「オマエの事、好き、なんだよ」

そう言って、五条先輩は私の首筋に顔を埋めた。車の中で聞いた告白よりも、今の方がドキドキしている。



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