第10章 彩光✿
「ほらよ、ゆめ」
同じデザインのストラップが二つ。
私は戸惑いつつもそれを受け取って、まじまじと眺めた。日に透かしたシャボン玉のような綺麗な硝子玉と、水色の飾り紐の付いた涼しげなデザイン。
片方を私の手から取ると、五条先輩は自分の携帯に付けていた。
「ゆめ、携帯出せ」
そう言われて素直に携帯を差し出すと、数秒後には、五条先輩とお揃いのストラップが私の携帯にぶら下がっていた。
嬉しいような、何処かソワソワしたような気持ちで、携帯のストラップを見つめる。
そして五条先輩を見ると、サングラス越しに合った視線はすぐに逸らされた。
「記念に、こーゆーのもいいだろ」
「……ありがとうございます」
私がお礼を言うと、五条先輩は少し照れたように頭を掻きながら「ん」と短く返事をした。
二人で歩きながら、私はストラップを眺める。
祭提灯の光を受け、幻想的な輝きを見せるそれに魅せられる。ゆらゆらと揺らすと、表情を変えるガラス越しの光がすごく綺麗。
いつまでも眺めていられそうだと褒めると、五条先輩は満足そうに笑って私の携帯にぶら下がったストラップを指で弾いた。
「これ、シャボン玉みたいだな」
「ホントですね。普通のガラス玉なのに、信じられないくらい綺麗です」
「射的の景品、ガラクタばっかだと思ったけどコレも悪くないな」
そう言って五条先輩が笑ってくれたので、私もつられて笑顔になった。
来年も一緒にお祭りに行きたい。
その言葉は飲み込んだけれど、私の歩幅に合わせて歩いてくれる先輩の隣は居心地が良かった。
こんな時間が、ずっと続けばいいのに。
感傷的な気分になりながら、五条先輩に差し出された手を取って歩き出そうとした、その時だった。
「痛っ」
下駄を履いている足に、ズキッと痛みが走った。
慌てて下を見てみると、鼻緒の部分が肌に擦れてしまって血が出ていた。
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