第10章 彩光✿
冷たくて甘ったるいシロップ味たちが舌の上で溶けて、消えていく。
その懐かしい味に満足しながら、指についてしまった練乳を不意に舐め取った。
「ゆめが練乳舐めてんの、なんかエロい」
五条先輩は私の手元をジッと見つめながら、そんなことを呟いた。
「何考えてるんですか」
私が思わず抗議すると、五条先輩は可笑しそうに笑って「何ってナニ?」と言いながら、かき氷を口に含んでいる。
からかってくる先輩を無視しつつ、かき氷を続けて口に運ぶと、案の定キーンと頭痛が走り、思わず頭を抱えた。
「ゆめって意外とバカだよな」
五条先輩はそう言って、私を見て愉快そうに笑う。
恨めしげに彼を見上げると、こちらの顔を見てさらに笑うのは失礼だと思う。
「う~、痛い」
私が呻いて頭を軽く叩くと、それを見た五条先輩は苦笑しつつも、かき氷を持っていない方の手で私の頭を撫でた。
「けどな……呪術師で『次』の話をフツーに出来る図太さがあるんなら、オマエは大丈夫だ」
不意にそう言われ、返す言葉が咄嗟に出てこない。
何も言えずにいると、五条先輩はさり気なく私の頬を撫で始めた。
彼の手が往復する度に、なんだかむず痒い。
蒸し暑い夜の空気に、ひんやりする手のひらが心地良い。私は黙って彼の言葉を頭で反芻しながら、しばらく撫でられ続けていた。
かき氷を食べ終わり、二人並んでなんとなく歩いていると、乾いた発砲音がした。
出店の方へ目を向けると、射的で何か小さいものを撃ち落とす様子が見えた。
「先輩、アレやってもいいですか?」
景品の中の一つに、私の大好きなマンガのキャラのキーホルダーがあり、一気にテンションが上がった。
ワクワクと心を踊らせながら隣を見ると、「ガキだな」と溜め息混じりに言いながらも、満更でもなさそうに五条先輩は頷いてくれる。
私は嬉しくなって小走りで射的のお店の方へ向かった。
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