第9章 桔梗の君

私は無意識に五条先輩の指をしゃぶっていた恥ずかしさで顔を背けようとすると、五条先輩の大きな手がそれを阻んだ。

五条先輩の親指が再び唇を撫で始める。

それだけで、先ほどの快楽が思い起こされて切なくなってきた。

五条先輩は私の唇をゆっくりとなぞり、やさしく押したり軽く爪を立てたりしてくる。

それが気持ち良くて、思わず吐息を漏らすと、五条先輩も熱っぽく目を細めた。

指が咥内に入り込んでくる。舌先を擦られて、ぞくぞくと快感が走った。

「ん……んぅ……っ」
「こっち向けよ」

五条先輩の親指が舌を弄ぶ。唇を撫でられる度にお腹の奥がじんじんと疼いた。

「はは、物欲しそうな顔してんじゃん」

五条先輩は、私の舌を指で弄んだあと、軽く口付けてくる。すぐに離れて、また唇が重なった。

酸素を求めて少し開いたままの私の口に五条先輩が舌を差し込んでくる。

互いの息を奪い合うように何度もキスをして、唇同士が触れ合う度に、じんわりとした快感が体の芯に滲む。

ゆっくりと口腔内を嬲るように愛撫され、力が入らない。私の口の中でうごめく五条先輩の舌は少しざらついていて、その感触すら快感を引き出して体がぶるりと震えた。

「んッ、ん……ふぁ……あ……っ、はぁ……ごじょ……せんぱ、い……」

舌を絡ませ合いながら、何度も触れ合い、余韻を残して離れる。

くちゅ、と軽い音を立てて、名残惜しそうに私の上唇を舐めた後に唇が離れた。

舌がジンと痺れて上手く回らない。

は、と小さな吐息が漏れる。

呼吸を荒くして五条先輩を見つめていると、彼も熱に浮かされたように息を荒くしていた。

「……ん……っ、俺のほうがクセになりそ……ゆめの舌、小さくてやわらけーな」

唇が離れると、五条先輩が熱っぽい目で私をじっと見つめてきた。彼の唇は、しっとりと湿っていて、ひどく色っぽい。

自分の口元を手で押さえながら、私は彼の目から視線を逸らした。

キスした──その事実を自覚すると、ますます顔が熱くなっていく。

五条先輩の額が私の額にくっつけられる。



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