第9章 桔梗の君
その距離にすら気持ち良くて、思わず吐息を漏らしてしまった。
「ゆめ……」
五条先輩の指先が私の耳に触れる。すりすりと擽るように撫でた後、ふにふにと耳朶を揉んできた。
「んッ、あ……」
と声が漏れると、彼は私の耳朶を弄ぶ。耳の輪郭をなぞるように指で弄られ、くすぐったさと気持ち良さに体が戦慄く。
耳たぶを指で挟んで揉まれたり、縁を撫でられたりすると、その部分がじわじわと熱くなってくる。
時折かりかりと耳を引っ搔かれて、甘い吐息を漏らせば、五条先輩が耳元で笑う気配がした。
「これから祭りに行くのに、なんつー顔してんだよ」
「な……っ、それは五条先輩のせいじゃないですか」
「ふーん、俺のせい……ね」
そう言って、五条先輩は私の頬を撫でる。思わずその手に擦り寄ってしまうと、五条先輩は愉しそうにくつくつと笑った。
五条先輩の腕が私の背中に回り、ギュッと抱き締められる。顔を寄せられて、五条先輩の柔らかな髪が頬に触れた。
「五条先輩……」
僅かな声量で名前を呼ぶと、目が合った。それだけで、心臓がぎゅっと締め付けられる。
「はぁ……溶けちゃうかと思った」
恥ずかしさに耐え切れずに独り言を呟くと、五条先輩の瞳が欲を孕んだように揺れる。
彼は小さくため息を吐いた。
「それ、煽ってるだろ」
耳たぶから裏側までを撫でられて、ぴくん、と体が揺れる。五条先輩の指が何度も往復する度に甘美な感覚に支配されて息が漏れた。
「……っあ、先輩それ、や……ッ」
「んー?ゆめは耳が性感帯?」
彼の吐息が耳にかかってゾクゾクする。
五条先輩の質問には答えず、ぷいっと顔を逸らして唇を尖らせる。フッ、と耳の穴に息が吹きかけられて「ひゃあっ」と驚いて飛び上がってしまった。
五条先輩は指先で耳介をくすぐり、ゆったりとした動作で耳を口唇で食んでくる。
「ゆめ、耳まで真っ赤」
そう言いながら五条先輩は私の耳を舌で撫で上げ、柔く噛む。
「ふぁ……や、あぁ……」
耳を愛撫され、弱い電気みたいなピリピリした快感が全身に広がる。ちゅっと音を立てて五条先輩が私の耳の端に口付ける。
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