第30章 水浴びのひととき
「わらわにも水を掛けるな、愚か者め」
アリスさんは水浴びには興味ないのか、ビーチチェアに座っていた。そこまで水が飛んだのか。私が謝ろうとすると、ロード様がお近づきになられた。
「アリスも少しは入ったら、ほら!」
ざぱぁとロード様はアリスさんに水を掛けたのだ。アリスさんもそれには不意打ちだったのか、魔法で凍らせる前に水が掛かってびしょ濡れだ。さすがのアリスさんも怒るのかなと思ったら、ビーチチェアから立ち上がってこう言ったのだ。
「わらわを本気にさせるとは……やはりロード様は不思議なお方だ」
とアリスさんが言った瞬間、大きな水飛沫が上がり、全員に水が掛かってしまった。まさか、アリスさんは水を操る魔法も使えるのだろうかと私は考えたが水中に沈む氷に気づいて分かった。アリスさんは、氷をプールへ繰り出して大きな水飛沫を上げたのだ。
「よ〜し、負けられないぞ〜!」
私は両腕いっぱいに水を掬って勢いよく空中へ放り投げた。水飛沫が太陽の光をキラキラと跳ね返してとてもキレイだった。ロード様やみんなが楽しそうに笑う。この平和な時間が、いつまでも続きますようにと、私は心から願った。
おしまい