第28章 ロード様が寝込んでしまった?!5
「で、私がロード様のお見舞いにそこまで来たら、イカロスさん、部屋の前でじっと立っていたんです。中に誰もいないの? って聞いても曖昧なことしか言わないし、とりあえずノックしたらお父さんもロード様もいるし……イカロスさん、ずっと扉の前で立っていたのかも」
すると、ロード様がクスクスと笑った。
「イカロスらしいわね。ジョアン、イカロスの代わりにノックしてくれてありがとう」
「いえいえ、私はただ、お見舞いに来ただけなので」ジョアンはそう言って、持っていた花束を持ち上げた。「私が、薔薇を持って来たかっただけなんです。トゲも処理したので、安全に鑑賞出来ます」
「では、花瓶を用意しましょう」
とタリアは言ってロード様のそばから離れようとした。そこにロード様が、こう声を掛けた。
「花瓶は二つ持ってきてね。イカロスの花と、ジョアンの花で飾るわ」
「分かりました」
それからジョアンは、部屋をあとにした。
「あーあ、だったら私も今から花を取りに行こうかしら?」
フェリシアもそんなことを言い、うーんと考え込む。
「フェリシアは、ロード様のそばにいてくれ。私が取ってこよう」
そろそろ来客も落ち着いてくるだろう。私がそう言うと、フェリシアはイタズラっぽく笑った。
「テラーソーンは取ってこないでよー?」
「んな……わ、私だって、花と魔獣の見分けくらいつく……!」
だが内心は、ちょっと焦った。未成長のテラーソーンもやや花に見えるからだ。
しかし部屋中はどっと笑いが広がり、ロード様も楽しそうだった。
こんな平和な時間を、いつまでも守り続けたいと私は改めて誓ったのだった。
おしまい