第27章 ロード様が寝込んでしまった?!4
「やぁ、邪魔するよ」
ノックもせずにロード様の寝室に入って来たのはタトラーだ。
「タトラー、ノックくらいしないか」
と私が注意しても、タトラーはのらりくらりとヘラヘラするばかり。それよりこれを届けに来たんだと、ワインを渡してくるから私は驚いた。
「それは、酒じゃないか」
病人に飲ませるものじゃないと言おうとしたところ、私の口を遮るようにタトラーはペラペラと話し始めた。
「酒は百薬の長って言葉を知らないのか? 弱っている今こそ飲むべきだ。しかもこれは、フルーツたっぷりの年代物だ。値段は張るがロード様のためなら半額で売ってや……」
「セールスお断りだ、タトラー」
「おい、ちょっと、俺の手首掴むな、おい、おい、追い出すのかお前!」
バタン……。
強引だったがなんとかタトラーを追い出すと、ロード様は上体を起こしていて力なく笑った。
「ふふ、相変わらずね、タトラーは」
「あとで説教して置きます……」
ヒーローを統括しているのは私だ。ヒーローたちの無礼は、私の責任になるのだろう。
「いいのよ、アルフレッド。彼なりの心配の仕方だったんだわ、きっと。でもどうしても素直になれないからああ言ったのよ」
「そうでしょうか……」
タトラーは「詐欺師」と呼ばれる程ずる賢いヒーローだ。私は彼が、詐欺をしないイメージがなかった。
「ゴホッゴホッ……」
その時、ロード様が咳をした。体を起こしているものの、また体調は優れていないのだ。
「ロード様、タトラーのことは放っておいていいから、今は体を大事にね?」
と言い、フェリシアはロード様が横になるよう促す。
「ルドルフさん、薬草取りに行ってからなかなか帰ってきませんね……」
とタリアも呟いて私は思案する。私も、薬草を取りに同行した方が良かったのだろうか……。
そうこうと考えている内に、また来客がやって来た。変な客が来たら追い出す役目も重要だろう。私は扉に向かった。
つづく