第26章 ロード様が寝込んでしまった?!3
コンコン……。
律儀にノックをしてきたので、今度こそ変な客じゃないだろうと扉を開けると、そこにはサラマンダーがいた。
「お見舞いに来たわ。……そんな怪訝そうな顔しないで」
とサラマンダーが言う。私が何を言いたいのか既に察しているのだろう。
「ロックフィン、妙なものを持って見舞いに来たぞ」
そう私が言うと、サラマンダーは不敵に笑った。
「見舞いに来たなんて成長したじゃない、彼」
とサラマンダーは余裕そうな顔をする。
「……まぁいい。ロード様は今お休みになられているから、静かにな」
言いたいことはあったが、ここで騒いで眠っているロード様を起こす訳にもいかないと寝具へ案内する。サラマンダーは寝具の横に来るや否やすぐに膝をついた。
「ロード様、早く元気になってちょうだいね?」
「サラマンダー……?」
すると、うっすらと目を開けてロード様が目覚めた。額に汗が滲み、顔色はまだ悪そうだった。
「お見舞いに来たの。でも手土産がないから、ここで火の舞を……」
「サラマンダー、刺激的なものは今はやるな」
まさかここで本当に火の魔法を出すつもりだったのかは分からないが、サラマンダーはそうねと言って立ち上がった。ロード様はサラマンダーの声が聞こえていなかったのか、まだ疲れが取れていないのかまた眠ってしまった。私は安堵した。
「サラマンダー、兵器の点検を頼む」
「分かったわ」
サラマンダーに適当な仕事を任せ、私は再び護衛の位置に戻る。油断ならない女性だ。もっとも、それはロード様にも言えることなのだが。
「失礼したわね」
と言い残し、サラマンダーは出て行った。ロード様の隣にはつかず離れずフェリシアとタリアがいるが、サラマンダーに反抗的な態度を取る彼女たちではない。私はもうしばらく、ここで護衛をしようと思った。
つづく……。