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ロード様とヒーローたちの休息[rm]

第20章 演劇


 するとルドルフは、客席にいた私たちの方にも杖を振った。思わぬ行動に私が怯んでいる隙に、空中を浮かんでいたアストレと合流し、その小さな手を差し伸ばしてきた。
 私が手を取ると、もう片方の手にはロード様が手を差し伸べ、失礼しますと握り返すと、私たちは円状になって宙を浮いていた。ロード様はアストレとも手を繋いでいたのだ。
「ふふ、空を飛ぶって楽しいわね!」
「そうでしょう? ワタシ、ルドルフによくやってもらってるの!」
 この魔法、いつ解けるのだろうかと私は心配したが、ロード様とアストレが楽しそうだったので私も笑みを返すだけにした。宙で三人、くるくると私たちは風車のように回って、やがて舞台に下ろされると、ロード様はまだケラケラと笑っていた。
「まるで風になったみたいだわ! こんな演出があったら民たちも喜んでくれそうね!」
 そう。私たちがこうしてホールを見に来たのは、ただ単にアストレたちの演技を見に来た訳ではない。民たちにもこのホールを自由解放しようとのことで私たちは彼らのリハーサルを見に来たのである。
「フォッフォッフォッ、空を飛ぶのはワシからロード様への特別サービスじゃ。他の者には秘密にしてくれると助かるのだがのう」
 とルドルフは言ってズレた帽子を被り直す。
「あら、そうなのね。ふふ、特別サービス、ありがと♪」
 と言ってロード様は、ライトにルドルフの頬に口付けをする。ルドルフも満更ではなさそうで、深々と頭を下げた。
「美しい女性からの接吻はいつでも嬉しいものじゃのう」
「そうなの? ワタシにもセップンしてくれるかしら?」
 一方のアストレは、まだまだ人間らしい言動には疎くて私たちの行動にはしばし疑問を持つことが多かった。だけどロード様は躊躇いなく、アストレの前にも膝まづいて。
「アストレも、ありがとね♪」
 アストレの頬にも口付けをするロード様。女性同士がこうも仲良くしている様子に、心が和むのはなぜだろうか。
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