第20章 演劇
城内には、大きなホールがある。
前の領地主の時からあったから、恐らく何世代も前に、誰かが趣味として作らせたのだろう。この城は、戦争がなかった平和な時代からあったと聞くし、その頃にはもっと娯楽が多くあったのだと思う。
そんな私の隣で、ロード様は楽しそうに拍手をした。するとそれを合図に周辺は暗転、スポットライトだけが舞台を照らし、閉じられた赤いカーテンがゆっくりと開いた。
そこには、本を両手に持って立っているタリア一人がいた。
「むかしむかしあるところに、赤い少女と呼ばれていた「『ブリキの人形』がいました……」
そう読み上げると舞台の袖にタリアが下がり、スポットライトもパツリと消える。ライトやカーテンは侍女たちが行っているが、主役はすでに決まっている。
「ワタシは、ブリキの人形のアストレ」そう言ってスポットライトに照らされたのは名乗った通りのアストレだ。「ワタシはずっと、赤い少女を演じていたブリキの人形よ。ほら見て、踊りだって出来るのよ!」
そうしてアストレは、カタカタと足を鳴らして踊ってみせた。右へ左へステップを踏んだり、くるりと回ってみせたり。こうして改めて見てみると、本当に人形なんだなと私は思う。
「だけどある日、恐ろしい炎が襲って来たわ……」
そう語りながら、アストレはオーバーな動きをしながらその場に倒れた。スポットライトも赤く染まって、まるで劇場の中がどこかの現実みたいだった。
「そうして、長い長い時間の中で、声がしたわ」
「お主に自由を与えよう!」
と白馬の彫刻に乗って現れたのはルドルフだ。ルドルフは手にしている杖でアストレに魔法を掛け、宙に浮かせた。
ルドルフはさらにセリフを続けた。
「自由がなんなのか、それはお主の目で確かめることじゃ!」