第19章 永遠の夢
ある日。王室に向かうと、そこにロード様の姿がなかった。どこへ行ったのかと周りの者から聞いてみると、どうやら執務室にいるらしい。
執務室は、普段ロード様が事務作業をする場所であった。ロード様のサインがないと困るもの、ギルド関係のものや民たちからの要望などなど……書類は山のようにロード様にやってくるばかりだった。
私もその書類を届けようとしていたところだったので執務室にやって来ると、やはり事務作業に追われているロード様の姿があった。
「それは報告書かしら、アルフレッド」
ロード様は書類から目を上げずに問いただした。いつも微笑んでいるロード様のイメージが強い私は、執務室にいるとずっと眉間のシワが寄っている彼女の姿がとても珍しいように見える。
「提案書です。これから城壁を強化するにあたって、何パターンか考えてきたのです」
「そ、あとで見てみるわ」
私が答えると、ロード様は書類の山を指差した。分かりましたとその通りに置くが、ロード様の手が先程から動いていないのが妙に気になった。
「あの、ロード様……」
「少しお喋りに付き合ってくれるってことかしら?」
私が呼び掛けると、ようやくロード様と目が合った。疲れている。それはすぐ見て分かった。
「私でよければ」
「ならそこの席へ」
何か助けを、と思っていたので、話すことで気が和らぐならと私は促されるまま椅子に座った。ロード様は俯き、はぁと長いため息をついた。こんなに暗いロード様は今まで見たことがない。