第17章 一輪の花
「ロード様……っていない?」
ある日のことだ。城壁についての報告をしようと王室へ向かうと、ロード様の姿がない。
近くにいる兵士や侍女たちに聞くと、中庭へ向かったと聞いて行ってみると、確かにそこにはロード様がいた。そして珍しい人物も一緒にいて私はつい聞き耳を立ててしまった。
「珍しいわね、シュラウド。こんなところにいたのね」
とロード様が言うと、シュラウドが無愛想に言葉を返した。
「ワレがどこにいようとオマエには関係ないだろう」
ここは二人だけの会話をさせてあげようと思ったが、次に興味深いことが聞こえて私は思わず足を止めてしまう。
「そうね。でも、そこの花壇の花を熱心に見ていたから、何か気になるのかと思って」
とロード様が言っていて、確かに中庭は花壇が多く、様々な花が植えられているなと私は思い出す。忙しくて気にしていなかったが、シュラウドも、平和な領地内では花を眺める余裕もあるのだなと私は一人で関心していると。
「確かに気になるな。ここは人が多過ぎる。野生の花は一つもない」
シュラウドが何を言いたいのか、私には分からなかった。だがロード様には分かるのか、そうね、と話続けるのが聞こえた。
「野生の花は、この辺りにはないかもしれないわ。エルフ族が守る森に行ったらもしかしたら……」
ジャギンと鋭い音が聞こえた。
「シュラウド!」
咄嗟に私が中庭へ飛び込むと、そこにはロード様の首元に刃物を向けるシュラウドの姿があった。鋭い音は、シュラウドが武装する音だったのだ。