• テキストサイズ

ロード様とヒーローたちの休息[rm]

第14章 影役者


「よろしく頼みますね」
 ロード様はそれ以上何も言わなかった。ロード様は本当は知っているのだ。シュラウドが愛情深いことを。人々を助けることが、いずれ自分に返ってくることを。
「ふんっ」
 そう返事のようなものをしたのち、シュラウドは王室を出て行った。彼はあんな態度を取りながらも、ロード様の指示に失敗した試しがない。恐らく、農夫の娘を助けに行ったのだと思うが……。
「一人で大丈夫でしょうか……」
 私が思わずそう言うと、ロード様は大丈夫よとまた誰かに呼び掛けた。
「ブリンク、さっきの話、聞いていたかしら?」
「もちろんです、ロード様」
 瞬く間に現れたのは、ブリンクだ。ブリンクもシュラウドと同じ、アサシン部隊の一人であり、どこで待機しているのか、こうしてロード様が呼び掛けるとすぐに駆けつけてくれる人物であった。
「シュラウドのお目付け役、お願いね」
「承知しました」
 ブリンクはシュラウドと対称的な人物だ。ロード様と真っ直ぐ向き合い、膝をついて深く頭を下げて礼儀を弁えている。アサシンとしてシュラウドの動きについていけるのも彼だけだろう。シュラウドのお目付け役には、適任だ。
「では」
 と言い残し、あっという間にブリンクも王室を出て行った。彼らが向かったのなら、そう遠くない未来、農夫の娘は救出されるだろう。
 だけど、いつも彼らを見送るロード様の顔が不安げなのが心配だ。
「ロード様、大丈夫ですか?」
「ごめんなさい……彼らにコソコソとするような仕事ばかり任せてしまうのが、つらくて」
 私が声を掛けると、ロード様は頬を拭う素振りを見せて王座へ戻る。優しいロード様は、あまり領地の主には向いてはいないようだ。
「光と影は共にあります。私は、そう思います」
 それが救いの言葉になるかは分からないが、私の声掛けに、ロード様は俯き加減で目を伏せた。
「そうよね……私も、そう思うわ」
 ロード様は小さくその場で何度も頷いた。まるで、なんとか自分で納得しようとしているみたいに。
「私は、影も好きよ。夜の空から星が美しく見えるもの」
「私もです」
 私は出来る限り、ロード様のそばに居続けようと心から思った。

 おしまい
/ 63ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp