第12章 美味しいもの
ロード様は定期的に、私たちヒーローを食事会に招いて同じテーブルを囲む日を設けていた。
といっても、いつも全員が集まる訳ではなく、反抗的なサラムはほとんど来ないし、そもそも人と関わることすら恨んでいるチャドラは絶対来ないのだが、いつも必ず来てくれるヒーローもいる。
それが彼、ロックフィンである。
かつてロックフィンは、なんでも食べる恐ろしいマーフォーク族の一人だった。下手すると人間をも食べてしまうような。彼が味方になってからは、いつも私たちと同じ食事をしてくれているのは有難かった。
「オマエのも美味そうだな」
ただ、隣にいる食事をも食べようとするのが困り者だ。
「これ食べる? 半分あげるわね♪」
とジョアンみたいに分け与えるヒーローもいるのだが、
「お前なんかにやるかよ」
タトラーのように意地悪なヒーローもいた。だからほとんどのヒーローたちは彼の隣には座りたがらず、ロックフィンの隣は、いつも私かジョアンが座ることが多くなっていた。
「今日はここに座ろうかしら」
そこに、王座に座っているはずのロード様が珍しく、客側の席にやって来たのである。
食事を運ぶ侍女たちは驚いたが、いつもとは違うことをするのがロード様だということは分かっているのだろう。すぐにロード様の元に食事を運ぶ侍女たち。私も食事を受け取って、早速食べようとした時にまたロックフィンが言い始めた。
「ロードサマの美味そうだな」
ロックフィンの反対の隣には私がいたのだが、まさかロード様の食事を貰うつもりなのだろうかと横を見やる。なんと、ロックフィンに出された食事はすでに空皿となっていたのだ。