第11章 女性たちの恋バナ
「だけど見た目は、イカロスもなかなかじゃない?」
と言ったのはサラマンダーさんだ。あまり気にしたことはなかったけどそうかも?
「興味ないな」珍しくこういう集まりにいるチャドラさんがようやく口を開いた。「男も女も、どいつもこいつも、私の目の前から消えてくれるならなんでもいい」
「あ、チャドラさん……」
そう言い捨てて、チャドラさんは席を立った。少しでもお話を、と思ったが、こんなに大勢だと話しづらかったのかな。
「同感」と言ったのはゴルダさん。「誰だろうと選んではいられないわ。我が刃の餌食にするまで」
と言って目の前のお菓子をまるで生肉を摘んでいるように食べるゴルダさん。多分ゴルダさんは、食べる目的でこのお茶会に来たのかもしれない。
「ワタシ、まだまだ恋とかよく分かんないから、みんなの話聞いて頑張る!」
とアストレが言って星のスティックを持ち直す。アストレは人形だから、お茶やお菓子は飲み食べしないみたいだし、みんなの話を聞きにお茶会に参加しているらしい。
「いいわね、その心意気。恋は私たちを強くするわ」
アストレに同意するサラマンダーさん。そう言われると、私も恋、した方がいいなかな、なんて思ってきちゃう。
「恋かぁ……私、全然気にしていなかったけど、強くなれるならした方がいいのかな?」
と私が言うと、サラマンダーさんはクスリと笑った。
「別に、恋じゃなくてもいいと思うけどねぇ」
「え」
「ジョアン、そこにいたのか」
サラマンダーさんの意味深な言葉に私はさらに話の続きを聞こうとしたのだが、誰かの声が割り込んできた。振り向くと、お父さんだ。
「お父さん」
「ロード様が呼んでいるぞ……と、皆で茶会でもしていたのか?」
「うん。今、みんなと恋バナを……」
「あーあー、発声練習、あーあー!」
私がお父さんにお茶会の話をしようとすると、いきなりフェリシアが大きな声を出して遮った。見るとこちらにウインクをして私にアイコンタクトを送っている。
「どうした、ジョアン?」
「ううん、なんでもない」
それより用事って何かしら? 私はお父さんを連れ出してお茶会から離れた。
私たちがお茶会で恋バナをしていることは、男性陣には秘密みたい。
「ねぇ、お父さん。お母さんと付き合ってた話を聞いてもいい?」
「な……なんだ、急に……」
「ちょっと聞いてみただけだよ?」
おしまい