第11章 女性たちの恋バナ
それから数分後である。
「で、ジョアンは誰がいいと思う?」
お茶会に来て早々、私にそう聞いてきたのはフェリシアだ。
「誰って……なんの話?」
てっきり、お茶やお菓子を楽しむ会だと思っていたから、突然の質問に私は困惑した。
「え、ジョアン、このお茶会がなんのお茶会か知らないの?」
「あら、言わなかったかしら」フェリシアに続いてサラマンダーさんが話を切り出す。「このお茶会、女子だけの恋バナお茶会よ?」
「えっ、こ、恋バナ?!」
恋だなんてそんな。この領地は平和だけど、周りは戦争だらけだ。そんなことを考えている余裕なんてないと思っていた私に、想い人がいるはずもない。
「別に婚約するしないの話ではないぞ、ジョアン」と言ったのは、お茶会メンバーの一人であるアリスさん。「気になる人の話とか、なんなら憧れの人の話でもいいみたいだから」
「憧れの人かぁ……」
私がすぐにパッと思いつくのは、お父さんだ。私はお父さんと一緒に戦うため、こうして騎士になり、ロード様に仕えている。恋バナどころではないのだ。
「私の憧れの人は、お父さんかな」
と私が素直に言うと、みんなは口揃えて「ああ、王道ね」なんて頷き合った。私にはその意図がよく分からず首を傾げるばかりだ。
「やはりいい男というのは、アルフレッドよね」と言ったのはリアさんだった。「体格もいいし、強いし。ただちょっと、鈍感なのがよくないわね」
「鈍感……?」
鈍感って言っても。お父さんはずっとお母さんのことを想っているだろうし、私はそうは思わなかったけど……。
「それに比べてサラムといったら! アイツだけは絶対一緒に暮らすのは無理ね!」
とやや怒り口調で言ったのはフェリシア。フェリシアがサラムさんと仲が悪いのはみんな知っていることだけど、強いのは確かなんだよなぁと私はすぐに賛成するのに躊躇っていると、アリスさんがぐいっと詰め寄って来た。
「やはりそなたは、サラムの方がタイプか?」
「えっ」
「サラムはわらわにも分け隔てなく接するからな。あと、サラムの放つ冷気は独特で美しい……」
私の返事を待たずにアリスさんは恍惚そうな目でそう語る。知らなかった。アリスさんが、あの乱暴なサラムさんが好みだったなんて。