第5章 道中
翌朝。
マスカーニャたちは、ユメの帰りを待つことにしていた洞窟から離れることにした。もしかしたらユメがここに戻ってくるかもしれないので、人間の文字が書けるポケモンに、自分たちは北へ向かうと暗号を残して出発した。
こうして、タイプも生息地もバラバラのポケモンたちが、ある一定の群れを作って行動しているものだから、通り過ぎるポケモントレーナーたちに驚かれ、時にはモンスターボールを投げられそうになった。
……ユメというポケモントレーナーを失った自分たちは、他の知らない人間に捕まってしまうのだろうか。
マスカーニャもみんなもそれを恐れ、協力してモンスターボールを弾き、人目がつかないところを歩くしかなくなってしまった。
飛行タイプも二匹はいたが、全員を乗せて飛ぶことは難しく。明るく開けた平原を避けながら森の中を歩いている内に一つの湖に辿り着いた。
長いこと移動したものだからここで一旦休もうとマスカーニャがニャオハへ目を向けたところ、毛並みがボロボロのポケモンが視界に入って驚いた。おまけに葉っぱやら木の実やら引っ掛かっているのに、気にする様子なく湖の水を飲んでいた。
「ねぇ、ニャオハ。毛繕いはしなくていいの?」
マスカーニャが声を掛けるとニャオハが振り向く。ポケモンとしての体に慣れていないのか、口の周りも水でびしょ濡れだ。
「毛繕い……?」
やはりニャオハは、毛繕いをしたことがないようだ。自分がニャオハだったから分かるのだが、常に毛繕いをしていないと、思った以上に力が出ないのだ。
「ほら、こうやって自分の毛を舐めて……」
「きゃっ、くすぐったい!」
「……っ!」
思わぬ反応をされてマスカーニャは顔を引っ込める。そうか、彼女は今はニャオハの姿とはいえ、元は人間だったのだ。こんなことを男の自分にされたら恥ずかしいのだろうと知った。