第3章 突然
マスカーニャは驚き、急いでモンスターボールから仲間のポケモンたちを呼び出した。
それから仲間たちにユメが突然いなくなったことを説明し、みんなでユメを探した。
もしかしたら洞窟の奥は外に繋がっていたのかもしれないという読みで、周辺の上空を飛行ポケモンたちで探してもらったりもしていたがとうとうユメの姿は見つからないまま夜を迎えた。
どうしよう、とマスカーニャ含めるポケモンたちは途方に暮れていた。トレーナーを失ったポケモンたちが、今更故郷に戻るという考えはなかったのだ。マスカーニャたちは全員、ユメの帰りを待つと決意した。ならばこの洞窟で彼女の帰りを待とう、と色々と工夫しながらここで暮らすことにしたのである。
その夜。炎タイプのポケモンが作ってくれた焚き火がすっかり消えた頃、気配を感じてマスカーニャは目が覚めた。
ゴーストタイプはマスカーニャに気付いてすぐ起きたが、一匹にしてくれと伝えて外へ出た。
いつもユメと共に賑やかに暮らしていたのが、故郷と同じ森の静けさみたいなのが余計寂しく思った。
「ユメ、どこに行っちゃったんだろう……」
マスカーニャは呟いた。空の月が真ん丸と光っていて、余計響くみたいだ。
ガサガサ……。
その時、近くの茂みが揺れた。気配的に野生のポケモンなのではと身構えていると、現れたのは一匹のニャオハだった。
マスカーニャは拍子抜けした。ニャオハは、自分がいた森以外にはいないとユメからも聞いていたし、マスカーニャ自身もそのことには薄々気付いていた。ならここにいるニャオハはどこから? という考えまで発展した時、ぽつりとこちらに話しかけてきたのだ。
「やっと誰かに会えた……私の言葉が分かる?」
そんな妙な質問にマスカーニャは素直に肯定出来なかった。だが一方のニャオハはこちらの困惑に気付く様子なく話を続けた。
「私、気付いたらポケモンになっていたの……」
衝撃的発言に、マスカーニャの思考は追いつかなかった。ニャオハはさらにこう言った。
「でも、自分が元は人間だったこと以外何も思い出せなくて……ここがどこか分かる?」
これが、記憶喪失のニャオハとマスカーニャの出会いだったのである──。