第7章 思っていたこと
洞窟は思ったより広く、マスカーニャたちが全員入ってもまだまだ余裕があるくらいだった。
震えている小さなポケモンたちのために、マスカーニャは焚き付け用の葉っぱを技で繰り出した。そこに炎タイプのポケモンが火を点けて、洞窟はほんのりと明るくなった。厳しい旅路だったからか、暖かさで眠りにつくポケモンもいた。
「ねぇ、マスカーニャ」
焚き火の光が届くか届かないかの境い目に立ってこちらを振り向くニャオハ。その光景は、あの日ユメが突然いなくなった状況にあまりにも重なり過ぎて、マスカーニャは返事するよりも早くに飛びついた。
「きゃあ?! マスカーニャ?!」
ニャオハは悲鳴を上げた。そこでマスカーニャは我に返って慌ててニャオハを離す。すぐにごめんと謝ったけど、今ニャオハがどんな顔をしているのか、マスカーニャは確認出来なかった。
「ほんとに、悪気はなかったんだ。だけど……あの時みたいに……俺たちのポケモントレーナーがいなくなった時みたいに、君も……いなくなってしまうのかと、思ってしまって」
こんなの言い訳だ。どんなきっかけだとしても、ポケモン同士でも突然飛びついたりしないのに。元人間だったニャオハからしたらもっと不快だったに違いない。
「そうだったのね……」だけどニャオハは、そんなマスカーニャに寄り添うようにこちらの顔を覗き込んだ。「私は大丈夫。こっちこそ、びっくりさせちゃってごめんね」
ああ、ニャオハ。そんなに優しくしないで。自分はこんなに嫌なポケモンなのに。
マスカーニャは罪悪感を抱き、とうとう心中を語ったのだ。
「あのね、ニャオハ。俺はずっと、思っていることがあるんだ」
「なぁに?」
「ニャオハ。君は、ユメなんじゃないか?」