第13章 黒猫、揺蕩う
「え、おま…ッ、ここで寝んの?」
「んー…。」
適当な返事にほぼ寝てんなぁ、とか思いながら見てたらの身体が傾き俺に寄りかかってきた。腕に頭が寄せられ柔らかな頬が素肌に触れる。うわ、半袖で良かったー!とか浮かれつつ部屋に戻してやるか悩みに悩む。…当の本人が?ここで寝たいって言ってる訳ですし?ここはお言葉に甘えて一緒に寝てやろうか。この前逆ギレされたけど。
の身体をベッドに寝かせて部屋の電気を落とす。暗くなった空間で好きな女の寝息が聞こえて来るかと思えば手を出さずに耐えてる俺相当偉いと思う。
身体を跨いで隣に潜り込む。以前は俺も眠かったから、無理矢理ベッドに入って来たを特に気にする余裕も無く寝落ちたけど今は状況が違う。窓から射し込む月明かりが顔を照らす。白い頬が、長い睫毛が、あどけない寝顔が全部好きだ。
「自分の事可愛くないって言うけど、お前どう考えても可愛いからね。ちょっとは自覚して頂戴よ。前みたいな事が有るとすげぇ心配するから。」
思わず指の背で目元を撫でるとぴくりと睫毛が揺れた。やべ、起こしたか…?
動きを止めて顔を見てると細く瞼が持ち上げられてとろんとした瞳と視軸が絡む。するとは、普段見せた事が無いくらい柔らかく笑った。そして片腕が俺の背中に回りピッタリ身を寄せられる。や、柔らか…じゃねぇ!
「おーい、サン…?寝惚けてますー…?」
「クロが居るから大丈夫。」
「は……。」
「いつもありがと……。」
言うだけ言うと直ぐに腕の力が緩む。一瞬呆気に取られた後、直ぐにドッと汗が滲み心臓がバクバクと鳴り出した。心無しか顔も熱い。
初めて見た顔だった。初めて雷でビビってる時以外に抱き着かれた。それだけで俺の心は馬鹿みたいに乱される。