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【HQ】黒猫の足跡

第13章 黒猫、揺蕩う



「まーた付き合ってるどうのって噂されるけどその辺はいいわけ?」

「困る事ある?好きな人がいるなら別だけど。」

「赤葦は?お前気に入ってんでしょ。」

「赤葦くんは私とクロが仲良いの分かってるじゃん。」

「なるほどね、俺と赤葦が可哀想って事だけ理解したわ。」

どうやらにとって俺は今も変わらず異性では無くお友達感覚って事らしい。このお土産も牽制や束縛の意味は無いと。…まぁ、別にそれで良いんだけど。コイツにその気がなくても、俺はお揃いのモンを持ってるって立場を勝手に利用するから。少なからずバレー部以外の男には効くだろ。

「じゃあ、用事これだけだから。」

「待った。………あー…もう少し稲荷崎の話聞かせてくんね?」

さっさと部屋に戻ろうと立ち上がるのを腕を掴んで反射的に止めてしまった。2日顔合わせて無いだけでこんな物足りない気持ちになるとか我ながら重症だと思う。
は1度目を丸めると、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせる。

「そんなに聞きたい?良いでしょう!!第1セットから全部教えてあげよう!!」

「お手柔らかに頼むわ。」

「稲荷崎の侑のサーブからスタートでね、3本連続ノータッチエース取ったんだ。1本目がサイドライン左際、2本目がバックゾーン左、3本目はバックライン右。4本目で相手側のリベロが触ったけどそのまま稲荷崎コートに返ってアランくんがそのまま叩き付けて連続で点取った。立ち上がりとしてはめっちゃ良かったね!」

「相変わらず良く覚えてんなぁ。」

正直、コイツは地頭がめちゃくちゃ良い。特に記憶力はずば抜けていてバレーの事になると殊更だった。ちっちゃい頃からバレーの試合を見ているからか、観察力も有る。試合中に向けられる視線は獲物を狙う肉食動物みたいで仲間だってのにたまに怖くなる位だ。そこまで見てんのかよって。
じゃあなんでノート取るのかって聞いたら、自分がもしも何らかの理由で居なかった時でも大丈夫なようにだと。本当に、よく出来たマネージャーだよ。
瞼を降ろし沢山の得点の中の1点1点、丁寧に、記憶を辿るように饒舌に語る口が軈て失速していく。隣を見るとうつらうつら船を漕いでいる。あー…こりゃ寝そうだな。

「。」

「んー…。」

「寝るなら部屋運ぶけど。」

「ここで寝る…。」
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