第13章 黒猫、揺蕩う
「…狡い女だねお前は。」
このまま、今すぐにでも告白して、抱き締めて、キスして、何もかも奪って、俺だけのものにしてしまいたい。…けど今じゃない。俺もお前もバレーが好きだから。俺たちの春が終わるまで、絶対にちゃんと伝えたりはしない。真剣に言葉にしてしまえば歯止めが効かなくなる事なんざ目に見えてる。それに、例えその所為で他の奴に取られる事になったとしても、バレーを疎かにしたら絶対に後悔するしな。俺も、お前も。
これは多分、コイツのバレーへの愛情に対する信頼と、俺と同じ気持ちだろ、っていう傲りだ。
隣で気持ち良さそうに眠るの頬でも抓ってやろうかと思ったけど、ぐっと堪えて枕に顔を埋める。
頼むから、これ以上他所で余計な虫つけて来んなよ…。そんな想いを胸に、俺も夢の中へと意識を落とした。
*黒猫、揺蕩う*