第13章 黒猫、揺蕩う
言いたいこと言って満足したのかスナリンは会った時と同じようにひらひらと手を振って行ってしまった。飄々としてるなぁ。というか、不機嫌気味の双子を上手く押し付けて来よったなアイツ。
「連絡消してまえ、俺が消したるわ!!」
「ツムの言う通りや、アイツはアカンて。何するか分からんやろ。」
「それは侑と治も一緒やんけ。」
「「………。」」
「黙んなや。」
目を逸らすな、こっちを見ろ、ついでに否定してくれ、怖いから。
ご機嫌ナナメ気味の双子に挟まれ駅に向かう。改札通る間際までこっち残れ引っ越せだの中々離れんくて大変やったけど、どうにか言いくるめて大阪まで向かった。新幹線までまだ時間あるし、バレー部にお土産でも買ってこ。
「…お、これ可愛い。」
見つけたのはたこ焼きの船の中にたこ焼きに扮した猫が紛れ込んでるキーホルダーだった。大阪らしくて可愛い。クロにも買ってこ。後はたこ焼き味の煎餅や研磨にアップルパイを買って、新幹線に乗る。帰りながら試合中にメモしたノートを取り出し稲荷崎の試合を振り返る。…どの選手もかなり出来上がってたな。流石スカウトに力を入れてるだけある。音駒でも慣れるのには時間が掛かりそうだと思った。試合する機会が有れば、だけれど。こればかりは運次第だな。
最後に適当な店でお弁当を買って、私は新幹線に乗った。
-黒尾視点-
日曜日、部活が休みであれば別段何か予定を入れてた訳でも無くソファの上で退屈な時間が過ぎて行く。そんな中でも携帯の通知が鳴れば直ぐに目を通す。
「…ははっ、何だこれ。」
送られて来たのはやや不細工な猫のパンケーキだった。何が"クロに似てる!"だよ。黒尾さんはもっとイケメンでしょうが。
けどまぁ、向こうに行ってまでアイツの心に俺がちゃんと残ってる事が嬉しくてつい頬が緩む。…いや、男と一緒に居るのは普通に腹立つけど。腹立つけども!底抜けのバレーバカなのも分かってるから止めはしない。俺もバレーが好きだから。
「早く戻って来ねぇかね。」
だだっ広い部屋に1人だとどうも落ち着かない。というかそもそもここの家じゃん。別に俺が留守番する理由って無くね…?自分の家に戻ってても別に良かったな。