第13章 黒猫、揺蕩う
「ええやん、4人順番でどや?1番点数低かったヤツがアイス奢り!」
「私が勝てるわけないやろ!!」
「は得点2倍にしてえぇよ。」
「それでも勝てんわ。」
「運動得意そうに見えるのに苦手なんだ。」
「人を見た目で判断するんは良くないでスナリン。めっちゃ苦手や。」
「…苦手なら俺と抜け出そっか。」
「は?……うわっ!」
意気揚々とバスケのアーケードゲームに向かっていく双子に着いて行こうとしたその時だった。後ろから耳元で囁かれた言葉に振り返るよりも早く手首を掴まれ引っ張られる。双子にバレる前に走り出したスナリンにされるがままついて行くと、近くの公園のベンチまで着いた所で直ぐに離された。
「ははっ、案外上手く出し抜けるもんだね。」
「はぁー…昼から思ってたけど、スナリンって思ったより強引なんやね…。」
「どういたしまして。」
「褒めてへんよ。」
とりあえずベンチに座るとスナリンも隣に座る。わざわざ連れて来たって事は何か有るんだろうけどあんまりいい予感はしないな。
いきなり走り出した為、少し荒れた呼吸を整えようと息を吐き出してスナリンを見ると、唇をにんまりと弧を描かせた。
「あ、何言われるか想像ついてる感じ?」
「いや、ヤな予感くらいはしてる感じ。」
「ふはっ、言うね。」
短く吹き出すとスナリンは昼間と同じ様に私の手を取ると指を絡めて握った。顔を見ると相変わらず彼はニコニコとしている。
「初めて東京で侑達と話してるの見た時、めっちゃ俺の好みの子と話してるなって見てたんだよね。そしたらこっち来るって言うし、連絡先も交換出来てラッキーって思った。」
「お、おん…。」
「卒業まで誰とも付き合う気は無いんでしょ?それなら俺にも十分チャンス有りそうじゃん。はあんまり何も考えずに連絡先教えてくれたんだと思うけど、俺は落とすつもりでいるから覚悟してね。」
繋いだ手が持ち上げられて、手の甲に唇が触れる。木兎とは真逆に静かな空間で、でも余りにもストレートな物言いと射抜くような視線に流石に心臓がドキドキと脈打つ。
「………良く考えたら、ブロッカーを弄ぶスナリンが曲者じゃないわけが無いんよね。」
「それはどうも。」
「これはまぁ褒めとる。後なぁ、これだけは言っとくわ。私は誰とでも連絡先交換してるわけとちゃうねん。」