第13章 黒猫、揺蕩う
「なぁ、今日何時くらいの新幹線やったっけ?」
「へっ!?あ、ええと……大阪に16時くらいに着けば、まぁ…。」
「意外にあっちゅーまやなぁ。卒業したらこっち戻ったりせんの?」
「大学は東京の方行くわ。」
「どこの大学にするか決めてるの?」
「…看護学校やね〜。スポーツ看護の資格取りたい。今度はチームやなくて、コートに立つ奴もコートの上を目指す奴も、もれなく全員支えたんねん!」
話している間にも、テーブルの下で手が蠢く。小指が離れたかと思えば皮の厚い人差し指が指の間をスリスリと撫で、手首を掴んで無理矢理私の掌を返し恋人繋ぎで繋がれる。
いや、別に手を繋ぐことが恥ずかしいとかそんな事は無いけれど、隠れて手を弄り倒されている事に対して何故こんな事になってんのか訳が分からず混乱と共に羞恥心を覚えて若干俯く。更に意味わからないのが、スナリンはめちゃくちゃ普通に話してるって事。何考えてんだこの人…!
「…そういう所が双子みたいなバレーバカを引き寄せるんだろうね。」
「んー、まぁ実際、好きなモン共有出来るって嬉しいからなぁ。」
「一緒に試合観に行くだけでも絶対楽しいやんな!」
「お待たせしました、黒猫のパンケーキでーす!」
「わああ!おおきに!ほんまにおおきに!!」
店員さんが運んで来てくれたパンケーキに思わず立ち上がる。どさくさに紛れて繋がれてた手を離した。
改めて座り直すと隣でスナリンが声を抑えて笑ってる。こいつマジで覚えとけよ。
スマホを取り出し写真を撮ってそのままクロに送り付け、メープルシロップをたっぷりかけてからフォークとナイフに持ち替えて問答無用で耳から切ってやる。
「なぁ、今度は俺にも1口ちょーだい!」
「まだ食べてないから待って!」
大事な1口目を人にあげる人とか居らんくない?そわそわする侑を横目に切り取った耳部分を口に運ぶ。メープルの香りとほんのり残るココアの甘さ、焼きたてほわほわ!
「うんま〜。やっぱり甘いもん最高!」
「あ、おい」
「ここ、ついてる。」
「えっ。」
「「は?」」
侑の言葉を遮り横から手が伸びて来た。かと思うと親指が私の口の端を拭う。その指先がそのままスナリンの口元まで戻ったかと思えば、指についたっぽいメープルシロップを舐め取った。その一連の仕草に一気に熱がぶわっと顔に昇る。
