第12章 黒猫、狐に逢う
「はあ?言いよるなぁ、うちだってちゃんと強いし負けへんよ。」
「俺らは今年も東京行くで!なぁサム。」
「おん。」
「腹立つけど今日の試合見たらその自信もまぁ納得だわ。」
去年のインハイの時も十分凄かったけど、今年は更に凄い気がした。3年になったアランくんは当然パワーも仕上がってるし、双子の息の合い方は幼い頃から一緒にやり続けていた結果だと思う。スナリンは個性が強いしアレだけでかなり強い武器になる。リベロの赤木くんも良いレシーブ上げるし、リードしてて少し空気が緩んだ時は主将の北さんがきっちり締める。凄くハイレベルかつバランスがいい。
「それにしてもまさか2人がここまでずっとバレー続けるとは思わんかったなぁ。」
「幼稚園生の頃から俺らにバレーゴリ押しして来たヤツがそれ言うん??」
「別にやれとは言うてへんもん、楽しいよって言っただけで。」
「あん時毎日バレーの話されて、バレーに呪われるかと思っとったわ。俺夢にバレーボールのお化け出て来よったもん。」
「治までそこまで言わんでも…。」
「勧めて来たとうの本人は球技からっきしやったけどな!!」
「うっさいわ眉毛毟るぞアホ侑!!」
「辞めや俺のアイデンティティやぞ!」
やんややんやと騒ぎながら夕食を終える。先に風呂に向かった治を見送り、侑と引き続きダラダラ話してる中、なんかめっちゃポケットでスマホが震えてるなぁと思ったらクロからアホほど連絡が来ていた。ちゃんと着いたかー、とか稲荷崎はどうかとか、どこ泊まってんのとかそんな。過保護か。これで別に付き合ってないんだからなぁ。研磨からの連絡なんて、アップルパイ買ってきての一言だぞ。
「あっ、そうだ。侑、ちょっとジャージ貸して!」
「ええけど今日着とったから汗吸ってんで。」
「まだ風呂入っとらんから大丈夫。」
侑は着ていたジャージを脱ぐとそれをそのまま渡してくれた。…脱ぎたてだから若干温いな。まぁいいや。
片腕ごと腕を通して借りたジャージを着込む。
「うわデカ。手ぇ出んわ。」
「そらそうやろ。」
「めっちゃ侑の匂いがする。」
「恥ずかしくなること言いなや、何が目的やねん!ちょ、嗅ぐな嗅ぐな!」