第12章 黒猫、狐に逢う
スナリンはひらひらと手を振り行ってしまった。別に1個違いなんてたいして変わらないから気にしないけど。まさか下と思われるとは。
「角名の事甘やかし過ぎとちゃいますか〜?」
「めっちゃ死んだ目しててやる気無さそうな顔してるのにバレーはちゃんと上手いし、寡黙そうに見えて話すとおもろいから好き。」
「はぁ〜?ちんまい頃は侑と治2人と結婚する!とか言うてた癖に薄情な女やで全く。なぁサム。」
「…今思えば2人と結婚しようとしてる事自体ヤバない?」
「「…た、確かに〜!」」
治の言葉に侑と揃って両手を持ち上げ治を指差す。侑とハモった事と、ちっちゃい頃の私一妻多夫でも狙ってたんかと面白くなり3人でゲラゲラ笑いながら2人の家へ向かった。
「ただいまー。」
「ただいま。」
「お邪魔します〜。」
「おおー、ちゃん!久々やなぁ元気しとった!?」
「お久しぶりですー、超元気ですよ!今日は泊めて貰ってありがとうございます!」
「ええんやで、うちの子らが呼んだんやろ。ご飯出来とるからはよ手ぇ洗い!」
侑達の家に着くと早速とばかりに2人の母ちゃんが迎えてくれた。相変わらず元気だし綺麗な人だ。
玄関で靴を脱ぐと少しスパイシーな香りがふわりと鼻を擽る。これは…!!
「「カレーや!」」
今度は治と声が被るとお互い見つめ合う。食い気の多さに吹き出し3人並んで洗面台へ足を運ぶ。
「おーい、狭いんですけど〜?」
「並べやツム、順番やぞ。」
「サムが後ろ行けや。」
「あっはっはっは!アンタら全然変わってへんなぁ!」
水道のレバーを上げて手を洗おうとすれば両側に双子が立ち、みっちみちにくっ付く。この狭い空間で密着すな、暑苦しい。母ちゃんは後ろから見て笑ってるし。助けて。
なんだかんだ譲り合いながら手を洗い、嗽を済ましてリビングに向かうと山盛りになったカレーが3つ、そしてサラダとスープまで置いてあった。食欲をそそる匂いに腹がグゥと鳴る。私はリュックを降ろし、侑と治の向かいに座った。
「「「いただきまーす!」」」
揃って手を合わせると各々好きに食べ始める。双子の母ちゃんは自分の部屋へ戻ってしまった。それにしても治はメシ食う時本当に幸せそうな顔して食べるなぁ。作りがい有りそう。
「そっちのバレー部どうなん、インハイ勝ち上がって来れるん?」