第11章 黒猫、嫉妬する
何となく痛むような気がする顬に空いた手をあてる。もしかして高校三年生にしてついに来たのか、私のモテ期。嬉しいよりもこれはちょっと胃が痛いかもしれない。
「ちょい、なんで俺がちょっと目を離した隙にこんな事になってんですか〜?」
「おかえりクロ。」
「思ったより早かったな。」
いつの間にか教室に戻って来たらしいクロが私と夜久ちゃんの後ろに立っており、手を無理矢理引っペがされる。
「マジで何してんだよ…。」
「だって黒尾とは付き合ってないだろ?それなら文句言われる筋合いも無いと思うぜ。」
「ぐぬ……っ!」
「私モテ期かもしれないぞ、クロ。羨ましい?」
「はァ〜?羨ましくないデスー、俺もさっき告白されました〜!」
「付き合ったのか?」
「なわけ無いでしょ。しつこかったから連絡先だけ交換したけど。」
「えっ、珍しい。実は満更じゃなかったり?」
「…そうだって言ったらチャンはどんな顔すんの?」
「うぜぇ〜、さっさと席戻りなよ。」
「可愛くねぇ…!」
べー、と舌を出した所で本鈴が鳴った。
渋々席に戻るクロをしっしと追い払い開放された手で頬杖をつく。…女の子に連絡先教えたのか。なんか女と連絡取ってるクロ、想像出来ない。何話すんだろ。てかフラれた男の連絡先無理矢理聞くか普通。度胸あるな。
何となくムカムカした気持ちを抱えながら、午後の授業を迎えた。
それからあっという間に部活の時間になる。皆いつも通り…いや、烏野との練習試合も近いからかだいぶ張り切っているように見えた。直井コーチに青葉城西の件について話した所、こっちとも練習試合が組めたらしく、ゴールデンウィークは練習試合三昧だ。東京以外の学校のバレーが見れると思うと、ワクワクが止まらない…!
「。」
「お、海くんお疲れ。ドリンクいる?」
「ありがとう。」
練習の合間、得点ボードの隣でスコアをつけていたら首から掛けたタオルで汗を拭きながら近寄って来た海くんに足元のボトルを渡す。しばらく喉を鳴らして飲んだ後、再び口を開いた。
「で、ヒーローってなんだったんだ?」
「あ、その話引きずるんですか?」
「はは。いやぁ、やっぱり気になってさ。」