第11章 黒猫、嫉妬する
付き合ってない男を制限する権利なんて私には無いし。まぁ仮にさっきの女の子と付き合うのであれば?私の家から出てって貰うけれども。別に1人で生活出来るし。彼女居る男と同棲とか、女の子に悪いですし?
「ずっと疑問だったんだけども大概黒尾の事好きそうなのに、何で付き合わないんだ?」
「えっ、私そんなクロの事好きそうに見えんの?」
「「みえるよ。」」
…何も2人で頷かなくても。しかしまぁ、そうか。人にはそんな風に見えてるんだ。なんだか少し気恥しさを覚えてストローを齧る。
「……クロは私にとって特別で、1番大切で、ヒーローなんだよね。」
「ヒーロー?」
夜久ちゃんが聞き返そうとした所で、予鈴が鳴った。そろそろ戻らないと。…クロも戻ってんのかな。
「チャイム鳴ったし戻ろ。」
「いやいや、すげー気になんだけど!ヒーローって何!?」
「ヒーローはヒーローだろ。夜久ちゃんも海くんも早く行こー。」
未だ納得いかないとばかりの顔をしている夜久ちゃんと海くんと教室に戻る。どうやら私たちの方が早かったらしくクロはまだ戻って来てない。
次の授業の準備をしながら悶々と考える。何をそんなに話しているんだろ…まさか、本当に付き合ったとか…?いやいや、アイツに限ってそんなわけ…無い事無いか。男だし。彼女が欲しくなる事もあるでしょ。
「めちゃくちゃ百面相してるじゃん、やっぱ気になる?」
「…そりゃあ、クロに女が出来たら夜久ちゃんも面白いと思わない?」
「シンプルにムカつくとは思うけど。でも黒尾に彼女が出来たらさ、は黒尾を諦めるワケだろ?」
「諦めるも何も好きじゃないってば。」
夜久ちゃんは授業の準備も終わらせたようで、机にベッタリと伏せて片腕に顎を乗せながらこちらを見上げてくる。その表情はまるでいたずらっ子みたく無邪気な笑顔を浮かべていた。
「お前ら幼なじみはいっつも距離近いし、これは入り込む隙もねぇな〜って思ってたけど…。」
「うん?」
空いてた右手に夜久ちゃんの手が重なった。手の甲を皮の厚い指先がつつつ、と撫で指を絡めて握り込まれる。…ン゛ッ、なんだコレ。
「俺も狙いに行っていい?」
「や…………ッくちゃんまで、昨日から一体どうしたの…。」
「木兎にあんな豪快な告白見せ付けられたら俺も負けてらんねぇなぁって思って。」