第9章 黒猫の笑い声
「言いたいことは分かりますがとにかく声抑えて下さい、さんが今までに見た事ない位困ってます。」
まるで新しい玩具…いや、新しいバレーの技術でも身に付けた時の様にキラッキラとした目に見詰められ思わず呆気にとられる。こいつ、馬鹿だとは思ってたけど底無しのバカかもしれない。物事には順序とか、場所とか…なんかこう、もっと色々あるだろ…!
突拍子も無い出来事に固まっていると、クロと夜久ちゃんが私を、赤葦くんが木兎を引っ張った。
「木兎といえど、ウチのマネージャーは譲らねぇよ。」
「少なからず、困らせる様なヤツには渡さねぇからな!」
「今のは木兎さんが悪いですよ。」
「別に音駒から奪おうってつもりはねぇよ、付き合いたいってだけで!」
「俺の目が黒い内は二度とに近寄らせません〜!」
「あぁもう…!帰りますよ木兎さん!さん、すみません。今度お詫びさせて下さい。」
「あ、うん。」
「ずリィぞあかーし、そんな事言ってちゃっかりデートする気だろ!」
「黙って下さい。ほら行きますよ。」
赤葦くんに背中をグイグイ押されて梟谷の2人は行ってしまった。合わせて遠巻きに見ていたギャラリーも買い物に戻っていく。
「ったく木兎のヤロー、油断も隙もねぇな…。」
「周りの目全部無視して告白出来る所だけは尊敬するよ…。」
「……ぷっ、あっはははは!!」
「うお、なになに。チャンまで壊れちゃった?」
「いやいや、こんなの笑うでしょ。いいなぁ木兎!」
思わず腹を抱えて笑う。いや、面白過ぎるでしょ。自分の感情に真っ直ぐ過ぎる。そういう素直な所、嫌いじゃない。
「まさか付き合う気か?」
「え?うーん、どうだろうね。付き合ったら楽しそうだとは思うよ。」
「…すげぇ顔してるぞ黒尾。」
「そりゃ複雑にもなるでしょ。相手木兎だぞ。」
「何もそんな顔しなくても。兎に角さっさと買い物終わらせようか。」
顰めっ面しているクロを連れて会計を済ませると今度はスーパーに向かい、ドリンクの材料も買ってからモールを出る。そこで夜久ちゃんとも別れ、クロと並んで帰路につく。さっきからずっと不機嫌そうだ。本当にわかりやすいな。