第9章 黒猫の笑い声
クロの提案で、モールのレストラン街へ向かうと洋食から和食、それこそ焼肉屋から何まで色々あった。その中でも私達は一番静かそうな和食屋へと入る。意外にも、すんなり通してもらえた。ラッキー。店員さんが持ってきた水を飲みつつ、それぞれ適当に定食を頼む。お腹空いたな。
「つーかさ!なんでは黒尾と住んでんの?」
「木兎それ今更?」
「ん家のかーちゃんが、の事これからもよろしくって。」
「両親が宮城のがんの研究センターにしばらく行くらしくてさー。一緒に見には行ったけど、結局私だけ東京残る事になったんだよね。そしたら1人じゃ心配だからってクロを寄越しやがった。」
「そういえば、なんでは東京残ったんだ?」
「…夜久ちゃん本気で聞いてる?君達が全国行くところ、見たいからだよ。この3年間、音駒に全部注いで来たのに今更投げ出すわけ無いじゃん、勿体ない。お、定食来たー。」
夜久ちゃんは少しだけ口を開いて固まった。そしてクロと顔を見合わせるなり、数秒の間を置いて2人ではち切れんばかりの笑顔を浮かべ背を叩き合う。そうだよ、気合い入れてくれ。私は、お前らの"繋ぐ"バレーが好きなんだ。見たいんだ。これからも。
綺麗なおねーさんが、次々と料理を運んでくる。赤葦くんと私は肉野菜炒め、夜久ちゃんは生姜焼き、木兎は焼肉、クロはタラの西京焼き。
「ヘイヘイヘーイ!そうはさせねぇよ?全国へはウチが行くからな!!」
「今年の音駒は負けませんー、お前の事試合中にしょぼくれさせてやるよ!」
「辞めてください面倒なんで。」
「赤葦も大変だよなー。」
「梟谷は木兎が調子いいとホント止まらないからねー。」
「そりゃあ俺は大エースだし!?」
「大エースならしょぼくれるの何とかしてくださいよ。」
「うっ…。」
あ、しょぼくれた。木兎の面倒見れるセッターはきっと赤葦くんしかいないだろうな。ウチの研磨じゃ絶対扱えないタイプだ。
「たまに入る超インナースパイクとかホントカッコイイよね木兎は。威力だって申し分無いし、敵ながら惚れ惚れする位木兎は調子いいとキレーに決まるからね。その時だけは素直に凄いと思うし超厄介って思う。」
「に褒められた…!?」