第9章 黒猫の笑い声
薄く開かれた目と合った。ほんとだ凄く眠そう。なんか普段見れない表情なだけにギャップっていうのかな。それがとても可愛い。そう思って、呑気にヘラヘラ笑っていたら徐に赤葦くんの手が私の腕を掴み、力任せに引っ張る。身体は赤葦くんの方へ向かってゆっくりと傾いた。隣に倒れた私はそのまま赤葦くんにしっかりと抱き竦められる。
「あ…赤葦くん!」
「あと5分…。」
そう言って、まるで抱き枕の如く私の身体を抱きかかえた赤葦くんは再び瞼を降ろした。こっちは気が気じゃないっての。何がどうしてこうなったって感じだよ。無理矢理起こす事も私には出来ず、ドギマギしていると戻って来た木兎がぱっと口元を覆った。
「お前らそーゆー関係…!?」
「んなわけないだろ寝惚けた赤葦くんに捕まっただけだよ!助けてよ!」
「いやー赤葦そういうの確信犯だぞ。」
「……そうなの?」
ぎっちり抱き締められてる身体。…確かに寝てたらこんな力入らないよな。ジーッと赤葦くんの顔を見つめてみる。
「………ぐう。」
「おいコラたぬき寝入りか赤葦くんコノヤロウ。」
「余計な事言わないで下さいよ木兎さん。」
「いやいや、俺はの身を案じてだな?」
これは助かったと言わざるを得ない。赤葦くんの腕の中から這い出て、まだ眠ってるであろうクロと夜久ちゃんの居る部屋へノックせず扉を開けたら…やっぱり寝てた。クロはいつもの寝方で、夜久ちゃんはそれより1つ下に頭下げて丸まって寝てる。
「おーいお前ら昼だよ!起きて!」
「ううー…。」
「やっくん!夜久ちゃん!衛輔くん!朝だよ!」
「…もっかい呼んで。」
「やっくん!」
「違う。」
「夜久ちゃん?」
「ちーがーう。」
「衛輔くん…?」
「…そう、それ。」
蹲ってる夜久ちゃんの耳が、面白い位真っ赤だ。可愛いな。そういえば名前で呼んだの初めてだっけ。
「ほらほら衛輔くんも鉄朗も起きて!買い物行くよ!!」
もそもそと布団の中の2人が身じろいだ。夜久ちゃんは布団から上体を起き上がらせ、クロは枕から顔を上げる。その目は揃ってやや半目だ。眠そう。
「買い物…?」
「そう!エアーサロンパスとか足りないものいっぱいなの。お前ら男でしょ、手伝って!」
「ハイハイ、人使い荒いヤツ…。」
「じゃあクロは寝ててどうぞ、夜久ちゃんデートしよ。」