第9章 黒猫の笑い声
朝…ではなくお昼近く。スマホのライン通知で目が覚めた。誰からだ…。眠たい眼を擦りホーム画面を開くと相手は及川からだった。そういえば寝る前に送ったっけ…。
"なになに、ちゃん宮城来るのー?もしかして及川さんに会いに!?"
…寝起き早々キツイなこのテンション。後で返そ。
そう思ってそっとスリープモードに戻す。身体を起こし、大きく伸びをしてカーテンを開き窓の外を見てみると空は快晴、絶好の買い物日よりだ。
ベッドから足を降ろし、リビングに向かう。テーブルは端っこに避けられ、真ん中でふたつに並べられた布団の中では横向きで眠る赤葦くんと仰向けで眠る木兎が一緒に未だ夢の中。どうやら夜久ちゃんは黒尾と寝てるっぽい。
2人の頭の上に、しゃがんで見下ろしてみる。寝てる姿は誰しも無防備で、普段の顔付きより幼く見えた。可愛いな。木兎はいつもワックスで髪カッチカチだけど、降ろすと凄い柔らかそう。つい、キレーな銀色の髪に手を伸ばし撫でてみた。やっぱり柔らかい。
「んー…。」
「朝だぞ木兎ー。」
「ー…?」
眉間に皺が寄ったかと思うと急にぱっちり目が空いた。怖いわ。合宿は一緒だったけど寝起き姿なんて見る事はまず無かったから新鮮だな。
「おはよー木兎。」
「はよー…よく寝たー。」
欠伸をしながら起き上がった木兎。眠そうに目を擦りしばらくぼんやりすると、弛緩な動きで私を見てへラッと笑った。やっぱりちょっと子供っぽい。
「朝からお前の顔見れるのって、なんか気分良いなぁ!」
「あ、うん、どうも…まだ寝惚けてんの?」
「寝ぼけてねーし!俺寝起きはいい方なの!」
「そう?」
確かに、朝からいつも通りの五月蝿さだ。そしてこの喧しさで起きない赤葦くん中々図太いな。慣れてるの…?
今度は隣で眠る赤葦くんを見下ろし、頬をつついてみた。
「赤葦くーん、朝だよー。」
「…。」
「反応がない。」
「あかーし結構寝起き悪いからなー。俺顔洗ってくる。」
へえ、意外。木兎が寝起きいいのも意外だけれど。
爆睡したまま起きない赤葦くんの頬をべちべちと軽めに叩いてやる。するとやっと少し目が覚めてきたのが、小さく身じろいだ。
「赤葦くん。」
「ん…。」
「あかーしくーん。」
「さん…?」