第8章 黒猫、赤く染まる
「ってさー、なんでモテんの?」
「え、なにそれ喧嘩売ってんの?」
「イヤイヤ!なんでかなーって純粋な疑問?」
「口悪いし女の子らしさみたいなの全然無いしな。」
「クロ殴る。」
「避ける。」
「顔は可愛いけどな。口がな。」
「夜久ちゃんそれ褒めてんの?貶してんの?」
「半々?」
「夜久ちゃん嫌い。」
「冗談だって。」
家に押し掛けて来ておいてなんなのコイツら。私の事嫌いなの?1人ずつオムライス顔面にぶち当てたろか…。
そう思いながらスープを啜りクソ野郎3人組を睨んでいると今度は無言だった赤葦くんが急に口を開いた。
「さんは口悪いけど、皆の事をしっかり考えてるし、良く気の回る優しい人ですよ。」
「あ…赤葦くん……!」
こういう事を真顔でサラッと言われると軽率にときめく。後輩の癖に男前なんだからこの子は。3年共も見習うべきだと思う。茶化すんじゃなくて褒めてください。
「言うねぇ。まぁマネージャーとしてウチのちゃんは完璧だけど?」
「頭撫でんな。」
「…ただモーチョットデレてくれたら黒尾さん嬉しいなって。」
「、ちょっと女の子っぽい仕草してみてよ。」
「夜久ちゃんは私に何を期待してんの?」
「女子らしさ。」
「例えば?」
「上目遣いとか?」
そうか、普段夜久ちゃんには出来ないもんね、って言ったら本気で怒られそうだから飲み込んだ。咄嗟の判断グッジョブ私。
「えっ、じゃあ俺甘えてくる所見たい!」
「木兎まで何言ってんの。無理だってキャラじゃない。」
「やれるってー、元は女の子だろ!?」
「元もクソもなく女なんだけど?シバくぞ木兎。ごちそーさま。」
先に食べ終わった私は食器を重ねキッチンへと運んだ。後から夜久ちゃん、赤葦くんと食べ終わった奴らがシンクへ皿を持ってくる。
「俺洗うから置いとけよ、先風呂入ってくれば?」
「んー、じゃあ入る。覗いたら卒業するまで口聞かないからな。」
「意外と短期間だなオイ。」
夜久ちゃんのツッコミを無視して自室に戻り気替えと下着を持って脱衣所へ向かう。髪を解いて着ていた服を洗濯カゴに突っ込み、既に湯気立つ風呂へ入りさっさとシャワーで汗を流し頭と身体を洗った。お風呂用のゴムで髪をまとめ、湯船に浸かる。至福の時間だわ…。