第8章 黒猫、赤く染まる
空いたコンロでは鍋にお湯を沸かし、コンソメを落として用意しておいた玉ねぎのスライスとベーコン、小さく切った芋を突っ込んでおいた。
「ここから見てるとお前ら夫婦みたいだなー。」
「何言ってんの木兎。夫婦とかナイナイ、せいぜい兄妹でしょ。」
「揃ってキッチン立てば誰でもそう見えるんじゃないですか?黒尾さんじゃなくても。」
「なんだと赤葦!羨ましいのかー?とキッチン立てる俺が。」
「手伝ってくれるなら別に誰でもいいからとりあえずスプーンとか持ってって。」
「おー!腹減ったー!!」
「黒尾振られたり。」
「うるせー夜久!」
ケラケラ笑い倒しながら赤葦くんと木兎と夜久ちゃんはキッチンにやってきて、完成したサラダやらスプーン、スープと箸を運んでくれた。
私は完成した卵をケチャップライスに被せていく。それもどんどん運んでもらい、最後の1つを終えたところでケチャップと一緒にリビングのテーブルへと運んだ。元々四人席だからっていうのもあって、1人誕生日席になるんだけど。なんで私なんだよ。
「全員にケチャップでハート描いてやろうか。」
「メイド喫茶か。」
「俺描いてー!」
「おーよしよし、素直な木兎にはハート描いてあげよう。」
「あ、じゃあ俺も俺も。」
「夜久ちゃんも任せなさーい、赤葦くんのは強制的に描くね。」
「あ、はい。」
結局木兎と夜久ちゃん、赤葦くんのオムライスにハート描いてやった。1人だけ要らないらしいから、普通にケチャップ渡すとわかり易過ぎる程に顰めっ面してる。面白い。
「…嫌とは言ってないんですけど?」
「描いてとも言ってなくない?」
「……俺は別にいつでもできるし。」
「見てこれ、強がり。面白いでしょ。」
「黒尾っての事になると本当ダメだよな。いただきまーす。」
「うるせー!夜久だっての事甘やかしてんだろ、知ってんだぞ!イタダキマス。」
「いただきまーす!」
「いただきます。」
「どうぞー。」
それぞれ箸やらスプーンやらを持ち、好きな物から手をつける。私はもちろん野菜から。シャキシャキのレタスとちょっとみずみずしいきゅうりが美味しい。部活後のご飯にホッとしながら腹を満たしていると、大口でオムライスを頬張る木兎が徐に口を開いた。