第2章 2人暮らし、始めました
「今日の部活は午後までだよね?」
「まぁね、来週には梟谷と練習試合もあるし気を抜けねーよ。」
「1年入ってきたばっかりだしね。はやくリエーフが上手くなってくれると良いんだけど。」
「アイツはレシーブがヘッタクソだからなぁ。甘やかすなよー?」
「わかってるって。ごちそうさま!お皿ヨロシク!」
「お前なぁ…!」
大皿と箸を置きっぱなしに私は部屋でジャージに着替えてから洗面所へと向かった。自分の歯ブラシを摘み共通で使う歯磨き粉を絞り出し、片手で歯を磨きつつ洗面台の上にある棚からクシを取り出し髪を梳かす。時計を見れば時間は結構ギリギリだ。急がないと。
「…器用な事してんのなお前。」
「ひふぁんふぁいの。」
「何言ってるか分かんねーよ。」
皿洗いまできっちりやってくれたらしいクロが洗面所に顔出すのと同じタイミングで私は一通り歯磨きを終え、口を濯ぐ。歯ブラシを元の位置に戻しクシと一緒に置いてあった赤いヘアゴムを二つ摘み上げ一つ口に咥え、長い髪を半分に分けて耳より少し低い位置で結ぶ。終わったらもう反対側も。所謂お下げ。
よし、完璧。
「行くよクロー!」
「おー。」
エナメルカバンを肩から掛けてスニーカーを履いて、鍵を閉める。
「なんかさー、研磨が居ないのが違和感というか寂しいというか。」
「元々俺がまず研磨迎えに行ってそのままちょっと離れたの家寄って登校してたしなぁ。というか、アイツも来れば良かったのに。」
「寧ろクロじゃなくて研磨が来れば良かったのに。」
「俺に失礼じゃありませんかそれ?朝起こして飯まで用意してやったの誰だっけ?」
「誰だっけね…?」
「しらばっくれやがって。」
他愛ない会話をしながら学校へと向かう。日曜日という事もあり生徒は部活がある人たち位しか居ないみたいだ。
「おはよー、黒尾。朝からベッタリだなお前ら。」
「夜久ちゃんおはよ!ベッタリはしてないっしょ。」
「おう夜久、今日は少し遅かったな?」
「昨日テス勉してた…明日小テストだろ?英語。」
「夜久ちゃんは真面目だねー。」
「前期終れば成績出るからな。それまではしっかりやらないと。」
「どっかの誰かさんも見習った方がいいんじゃない?」
「私は真面目ですけど?じゃあ先体育館行ってるから。お前らさっさと着替えて来てよ。」