第7章 黒猫、飛び上がる
「……意外とそういう所の分別付いてるんですね。」
「それ貶してる?つーか、俺アイツのやり掛けの仕事も片してくるわ。タオル使えねーの困るしネ。」
会話なんてもちろん聞こえるはずも無く。何曲か終わった頃、不意に肩を叩かれ顔を上げると覗き込んで来たのは赤葦くんだった。凄い、心配そうな顔してくれてる。動画を止めてチラリとヘッドホンを外してみた。…まだゴロゴロいってる。
「片付け終わりましたよ、さん。」
「ん…ありがとう。クロは?」
「タオル乾かして来るって。」
「……今度美味しい秋刀魚買ってやろう…。」
しっかり元通りになった体育館では、皆が既にスポーツバッグを持って帰る支度バッチリ、といった所だった。後はクロが戻ってくれば体育館を閉めて終わり。私もさっさと立ち上がり、カバンにノートを押し込んで体育館の電気を消してから赤葦くんと一緒に体育館入口に向かう。
「おう、帰る支度済んだな。じゃあ体育館閉めるぞー。」
土砂降りの中戻って来たクロは片手に体育館の鍵を持っていて、全員が外に出たのを確認してから鍵を掛けた。私はモチロン、クロの傘の下に潜り込み空いている片腕にガッチリとしがみつく。
「家近いんだしもう少しだけ我慢しろよー。」
「ん…。」
「さん、俺の傘の方が広いですよ!入ります!?」
「リエーフお前黒尾達と家反対方向じゃん。」
「お、送りますって!」
「アホ、それなら俺の傘に入ってる方が早いだろ?」
「あいあい傘ズルイですよ黒尾さん…!」
「幼馴染みの特権デース。」
そんなことどうでもいいから雨も雷も止まないかな。…というか雨風強過ぎるな、嵐か?校門出てから既に逆方向組の犬岡、山本、リエーフと分かれいつにも増して真っ暗な道を歩く。ピシャリと雷が落ちる音がする度、私の身体は自分でも引くほど飛び上がりほぼ反射的にクロの腕に思いっきりしがみついた。普通に考えて、雷の日に外に出るってありえなく無い?落ちてきたらどうするの?死ぬよ?
げんなりした気分で水溜りを蹴りながら歩いてると、隣でスマホに視線を落としていた赤葦くんが不意に声を上げた。
「あ…。」