第6章 黒猫と梟の戯れ
「俺折り畳みあるから大丈夫だって。」
「走って帰るしかないか…。」
「なぁ俺の傘に入るっていう選択肢。」
空は灰色、ほんとに今にも降りそうだな。学校近くのコンビニに寄ってから、クロと肩を並べ体育館へと向かう。勝ったらなんか美味しいモンでも作ってやるか。つっても魚料理になりそうだけど。いやむしろ皆で食べに行くか。
途中でクロと別れマネ室に向かい、ボトルとノートを持って体育館へ向かった。中は既に得点ボートや椅子、テーブルの設置などで慌ただしい。私も手伝わないと。
「お、おは…おはざっす!さん、こ、こここの、この椅子こっちでいいっスか!?」
「うん、オハヨー山本。そこ並べといて。というかいい加減私に慣れて。」
「さーん、得点ボードってここでいいですか?」
「うん、後1つ出しといて犬岡ー。」
「うすッ!」
「ー、前回の戦績見せてチョーダイ。」
「はいよ。」
持ってきたノートの付箋を頼りに前回の梟谷との練習試合の結果を指先で辿る。それをクロが後ろから覗き込む。うーん、結果はあんまりいいもんじゃないな。
「6セットやって4-2でウチが負けてまーす。今日は勝って下さーい。」
「言うねぇ、今日は負けねーよ。」
「勝ったら皆で何か食べに行く?焼肉とか。」
「これ練習試合だけど?」
「モチベーション上がるでしよ。」
「俺は焼肉よりお前の事食いたいなー?」
「は?」
「素のトーンヤメテ。」
何アホな事言ってんだコイツ…。そんな意味合いを込めた眼差しを向けてやるとクロは悪びれもなくへらりと笑った。それから程なくして始まるアップ。私もボトル作りに行かないと。
朝にも関わらず外は相変わらずどんよりしていて暗い。気もそぞろに材料をボトルに入れては、蓋を締めじゃかじゃかボトルを振りたくる。大あくび一つ零していると、不意にそこそこ聞きなれた声が耳に飛び込んできた。
「いんやァ、ひっさびさの音駒だなぁ木葉!」
「こっちに来るのは久々だなそういや。」
「ねぇ赤葦〜。体育館こっちだっけぇ?」
正門に見える目立つ身長と灰色の梟みたいなツンツン頭。梟谷だ。私がその場から大きく手を振ると向こうも気付いたみたいで木兎を筆頭に手を振返しこっちへやって来た。