第6章 黒猫と梟の戯れ
「おーい、起きろー。」
「んんー…。」
「サーン。」
「後30分…。」
「なげェよ遅刻するわ。」
微睡む意識の中クロの声が聞こえる。けれどまだ眠い。あぁ、でも今日練習試合…。頭の中で緩やかな葛藤が起きる。布団の中が暖かすぎて出たくない。布団が私を離してくれないんだ。…暖かいけどなんか妙に狭いな。重たい瞼をゆっくり持ち上げると、視界を埋める黒。アレ、私瞼持ち上げたつもりになってるだけで、本当は起きてないのかな。いやそんな訳あるか。
「起きた?オハヨーねぼすけ。」
「ん…アレ、クロ?アレ?」
何で私はクロに抱き締められて寝てんだ。てかよく見ればここ私の部屋じゃねえ。
「お前が深夜寝ぼけて俺のベッドに無理矢理入り込んで来たんだからな?」
「………死のう。」
「どんだけ嫌なんだよ!黒尾さんに失礼じゃありませんかー!?」
「深夜の自分を殺したい…。」
「幸せそーにグースカ寝てた癖に。」
「寝てる時くらい幸せでいたいだろ。」
「よく眠れただろ?」
「後30分自分の部屋で寝たい。」
「だから遅刻するって、起きなさい。」
「いーやー!クロの馬鹿!変態!」
「ハイハイ、いいからさっさと着替えろ時間ねーぞ!」
「うーす。」
ベッドから足を下ろし大きく伸びをする。それにしてもマジでよく眠れたな。そう思って周りを見渡して居ると不意にニマニマと笑うクロが顔を覗かせた。
「今後も俺と寝たくなった?」
「…寝方ウザいから無理。てかなんで私と寝てた癖にいつもの寝癖ついてんの?」
「お前が部屋に来るまでには出来上がってた。」
「可哀想に…。」
「うるせーよ!」
「おーこわ。」
クロの部屋から逃げ出し先に昨日干したままのタオルを取り込む。外で干したからふっかふかの柔らかさだ。それを持ったまま自分の部屋に戻りさっさと練習着に着替える。昨日の残り物の朝食を済ませ洗面所で歯を磨き髪を結わう。…今日は赤葦くんが来るからちょっとコテで毛先巻いたり。
結構時間もギリギリということでお昼ご飯は買い弁かな。畳んだタオルをエナメルバッグに突っ込み、家を出た。
「ほらクロ行くよー。」
「おー。」
「なんか天気悪いな。雨降りそう。」
「天気予報雨デース。」
「おいそれ家出る前に言ってよ!」